建物状況調査報告書の見方お客様への説明のポイント

今回は、売主様・買主様に建物状況調査の結果報告をする際のポイントについて解説いたします。宅建業法で求められているのは「建物状況調査の結果の概要(重要事項説明用)」のみとなりますが、概要には具体的な不具合の詳細などは記載されていません。お客様から質問があった場合の備えとして、また売主様・買主様が双方ご納得の上での満足行く取引を行うため、写真つき報告書を用いた対面での説明をお勧めしています。

約1週間で検査結果をご報告

建物状況調査を実施後、1週間程で申込みをおこなった仲介会社様宛に、メールにて「建物状況調査報告書」をお送りします。ジャパンホームシールドが実施する建物状況調査は、「既存住宅かし保証」の検査基準も兼ねているので、一定の条件を満たし適合物件と判定された際は「既存住宅かし保証」の申込書もセットでお送りしております。

重点的に説明すべきポイントについて

報告書サンプルとともに、お客様への説明のポイントを見ていきましょう。ジャパンホームシールドの報告書は、まず大まかに以下のような構成に分かれています。

  • 検査の注意事項と検査内容および検査箇所の概要
  • 建物全体の調査結果(1~6ページ)
  • 指摘事項があった箇所の劣化事象の詳細(7ページ~)
  • 建物状況調査の結果の概要、および付属資料(報告書末尾)

まずはの容認事項と全体の劣化事象一覧を用いて結果を大まかにご説明し、次にの項目ごとの詳細の内容にて説明を行うといった流れとなります。

> 報告書のサンプルはこちら

❶ 検査の注意事項と検査内容および検査箇所の概要について

報告書1ページ目および2ページ目には、検査に関する注意事項、住宅のどこを検査するのか、その範囲や内容など、検査について書かれています。まず建物状況調査の前提を説明しておくことで、説明をスムーズにおこなえます。
建物状況調査について誤解されやすいのは、「調査は『目視や計測等による非破壊検査』であり、壁の中やクロスの下地など見えない部分は調査対象外である」ということです。また家具や大きな荷物が置いてある、床下や天井裏を調査するための点検口が無い、など調査時に目視確認ができなかった箇所も調査対象外となります。
 さらに対象は建物における「構造耐力上主要な部分に係るもの」「雨水の侵入を防止する部分に係るもの」であり、それ以外の部分、例えば住宅設備の動作確認や住宅の遵法性の確認、建物の立っている土地の調査などは一般的に検査項目に含まれていないのでご注意ください。
なおこの検査において、劣化事象がある=(イコール)「瑕疵がある」ということではなく、あくまでも国が定めた検査基準に沿って、劣化があるかないかを判断しています。そのため劣化事象が建物の構造的な欠陥によるものなのか、劣化の要因がなにかといった瑕疵の有無を判定する調査ではないこと、耐震性や省エネ性など住宅の性能評価をするものではないことが報告書1ページ目に書かれてあるので、先に前提を説明しておくと、その後の誤解を防ぐことができます。

❷ 建物全体の調査結果について

次に検査項目ごとの劣化事象の有無と劣化の程度についてですが、検査項目は大まかに3つに分かれています。まず4ページ目で建物全体における柱や梁、基礎など「構造耐力上主要な部分に係るもの」、屋根や天井など「雨水の侵入を防止する部分に係るもの」、「給排水管路に係るもの」(オプション検査)という大まかな部位ごとに劣化事象があったかなかったかを表示しています。
そして次のページ以降の「項目別調査結果」のページでは、「どのくらいの範囲で目視確認ができたか」と「確認できた範囲においての劣化事象の有無」が記載されており、項目ごとの結果が報告されています。
 この結果の報告については、以下の調査結果表に照らして劣化事象(故障・不具合)等を「あり(×で表示)」「なし(○で表示)」「-」にて結果判定を行っており、劣化事象が「あり」とされたものは、「明らかな不具合と判断される(×で表示)」ものと「詳細調査をするべきと判断される(△で表示)」の2つを含んでいます。「-」は何らかの要因で調査が実施できなかったもの、またそもそも対象がなかったということも「-」で表記しています。

また、6ページの耐震性に関する書類の確認は、新耐震基準の住まいであることが提出された書類から確認できたかを示しています。なお、旧耐震の物件でも検査をおこなうことはできますが、「既存住宅かし保証」については、新耐震基準を満たした物件でないと、対象とはなりませんのでご注意ください。

❸ 指摘事項があった箇所の劣化事象の詳細について

の「項目別調査結果」のページで結果が「△」・「×」・「不実施」などになった項目は7ページ目(給排水管路調査を実施している場合は8ページ目)に一覧化されており、このページを見ていただくと、建物全体でどこに劣化事象があったかを一目で把握できます。
 次のページ以降は各部位ごとの詳細説明のページとなり、検査における現場写真とともに、劣化事象・不具合などを分かりやすく説明しています。また検査の不実施箇所もその理由を報告していますので、なぜその箇所が調査できなかったのかをお客様に説明するようにしてください。なお、報告書の構成として、建物外部から内部、その他の順にページを分けています。

各部位ごとの詳細説明のページの後、調査で撮影した写真一覧のページを挟んで、レベル傾斜測定図のページとなります。こちらは頂いた間取り図に不具合箇所をプロットしたものに加え、床や壁の傾きを測定し表示しています。傾きの判断基準は、「住宅の品質確保の促進等に関する法律」(品確法)において「構造耐力上主要な部分に瑕疵が存する可能性が高い」とされている、「基準となる場所の値から6/1000(6mm)以上の傾きがある場合」に指摘事項となります。

❹ 建物状況調査の結果の概要、および付属資料(報告書末尾)

最後に、重要事項説明にも添付する必要がある「建物状況調査の結果の概要(重要事項説明用)」がついています。劣化事象の有無については、△・×→「有」○→「無」、また点検口がないなど調査ができなかった箇所は、「調査できなかった」にチェックが入っています。なお、二重線が引かれているのは「該当部位なし」を示しています。
 その他付属資料には、調査後、かし保証を利用する場合の流れや、補修工事に関する記載がありますので、こちらも必要に合わせてご説明ください。

まとめ

「劣化事象が報告された=欠陥住宅だ」と極端な捉え方をされてしまう方もいらっしゃいますが、例えば基礎の軽微なクラックやシーリングの破断などは経年劣化としてよくあることで、度合いにもよりますが、あまり費用をかけずに修理できることもあります。建物状況調査の結果説明は宅建業法上の義務です。売主様・買主様双方が納得して円滑に取引ができるよう、検査報告書を基に詳細の説明をお願いいたします。

公開日:2019.01.15

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