建物状況調査とインスペクションの違いとは?

ホームインスペクションとは?

2018年改正された宅地建物取引業法に中古住宅市場活性化の肝入りとして盛り込まれ、今注目されている「建物状況調査」。これは一般的に「ホームインスペクション(住宅診断と呼ばれることも)」と呼ばれる検査の一種です。もともと「ホームインスペクション」とは、住宅に施す検査全般を指すもので、欧米では中古住宅の購入時に専門家(インスペクター)が住宅の劣化状況や欠陥の有無、改修すべき箇所やその時期、おおよその費用などを見積もり、修繕や売却の際にアドバイスを行うことです。アメリカでは新築住宅よりも中古住宅市場の方が規模が大きく、7割以上の取引で活用されており、この「ホームインスペクション」もすでに「使うのが当たり前」と言えるほど定番化しています。

建物状況調査とインスペクションの違い

よく「インスペクション」という言葉で表されることの多い住宅検査ですが、宅建業法に定められた「建物状況調査」とはどう違うのでしょうか。「インスペクション」はよく住宅インスペクション、ホームインスペクション、住宅診断などの言葉が使われていますが、全て「住宅に施す検査全般」のことを指しています。

対して「建物状況調査」は【宅建業法において定められた基準に基づいた検査】のことを指しています。今まで実施されていた「インスペクション」は、業者ごとに内容や基準が異なるなど、検査内容や検査員の資格の有無などが明確でなかったため、検査員の技術力や検査基準、並びに検査方法の指針を示した「既存住宅インスペクション・ガイドライン」が国土交通省により定められました。、建物状況調査はこの流れをくみ、さらに宅建業法により明確に定められた基準、資格に基づいて行われることになります。

中古住宅取引の活性化を目指すための法改正

日本の住宅市場では2016年、首都圏における中古マンション成約件数(37,189件)が新築マンションの年間供給量(35,772戸)を初めて上回りました。今後も中古住宅市場が規模を拡大していくであろうという中で、2018年4月にさらなる中古住宅市場活性化を狙い、宅地建物取引業法が改正されました。

中古住宅、特に中古戸建住宅については「隠れた不具合が心配」「耐震性や断熱性など品質が低そう」(※)など、現状の品質がわからないことが、購入のネックになっていると思われます。実際に、一般社団法人全国住宅技術品質協会が2017年5月におこなったアンケート調査でも、売主様の66.0%、買主様にいたっては83.2%の方が、売買契約をした後で「欠陥住宅と判明することが怖い」と答えています。この不安を、「建物状況調査」を実施・普及させることで解消し、中古住宅取引の増加を目指そうというのが、今回の法改正の狙いです。

なぜ今、「建物状況調査」が必要とされるのか

「もし、購入した家が欠陥住宅だったら…」という懸念は、中古住宅を買う方には少なからずあるのではないでしょうか。買主の「住宅の品質を知りたい」というニーズを満たし、取引成立後のクレームのない、トラブルのないスムーズな取引を行うためには、住宅の現状を把握できる「建物状況調査」が有効です。

2018年4月に行われた宅地建物取引業法改正では、宅地建物取引業者が、「建物状況調査」の制度内容を売主様・買主様双方に伝え、お客様の希望により実施する場合は、調査を実施する事業者をあっせんすることが義務付けられました。

今は売主様・買主様にまだ馴染みがない「建物状況調査」ですが、この改正により、今後消費者に周知が行き届き、日本での普及が期待されています。今まで築年数を経た建物は、資産価値が低いとされてきましたが、検査を行うことにより、高い品質の住宅にはさらなる価値が創造される、という変化も起きるかもしれません。

建物状況調査を行うメリットは、
取引のリスクヘッジができること

宅建業者にとって、建物状況調査を行う大きなメリットは、中古住宅の劣化状況を把握できた上で不動産取引を行うことができるので、リスクヘッジとなりスムーズな取引が可能になることです。これを売主様・買主様の視点から考えてみましょう。

売主様としては、契約前に住宅の現状を把握することで売却後のクレームを未然に防ぎ、トラブルを回避できることがひとつのメリットとなります。さらに購入検討者にとっては、購入を希望する物件が「安心の調査済み物件」であることは他物件との差別化ポイントとなりえます。実際、「SUUMO」などの不動産ポータルサイトにおいては、物件の検索項目の中に「インスペクションの有無」や「かし保証の有無」が入っており、他の物件より選ばれやすくなっています。また売主側で調査を行わず、買主側の要望で調査をした場合は、購入申込みから売買契約までに長い時間がかかったり、検査の結果によっては申込みを取り下げてしまう恐れも。そのため不動産会社の皆様には、事前の検査を促すことをおすすめします。

また、買主様としては検査で建物の現状を知ることで、安心して購入ができます。さらに補修費用や将来のリフォームの実施時期の検討など、購入後の維持管理の計画がたてやすくなります。ただし、買主様側から申込み後や媒介契約時に検査実施を要望すると、検査の実施と報告書の発行には時間を要するので、その間取引がストップすることになります。申込前に検査要望の有無を確認するのがベターでしょう。

なお、建物状況調査の結果不具合が発見されず、かつ一定の基準を満たす住宅は、引き渡し後に瑕疵が発見された場合に、保証が受けられる「既存住宅売買かし保証」を利用することができます(以下、かし保証)。かし保証を利用するためには、建物状況検査と合わせて、「瑕疵保険基準の適合検査」を行う必要があります。この「かし保証」を利用すると、買主様にとってはもう一つ大きなメリットが。保証を利用することで物件に対して発行される「既存住宅売買瑕疵保険の付保証明書」は、「耐震性を証明する書類」として活用できるため、築年数が経過した物件でも住宅ローン減税などの税制優遇を受けることができるようになります。

まとめ
ホームインスペクションと実施のメリットについて

  • ホームインスペクションとは、住宅に施す検査全般をさすもので、中古住宅取引の多い欧米ではすでに一般化しています。
  • 日本では中古市場が徐々に活性化。「中古は不具合や品質が分からないのが怖い」という不安を解消するため、インスペクションの一種である「建物状況調査」を普及させるべく法改正が行われました。

建物状況調査を行うメリットは、売主・買主双方が安心して取引を円滑に進められること。そのほか、購入後の思わぬ修繕による出費や、購入後見つかった不具合の補修費用のトラブルなどを未然に防ぐことができるというメリットもあります。

公開日:2018.12.01

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