瑕疵保険(保証)とは?中古住宅の隠れた欠陥から買主様を守る保険の仕組み

補修工事の基本的な考え方

瑕疵とは、通常、一般的に備わっているにも関わらず本来あるべき機能・品質・性能・状態が確保されず、欠陥があることをいいます。住宅・マンションの場合の「瑕疵」とは、耐震性能が法律で定められた基準を下回ることや、土地や建物に造成不良や、雨漏り、設備の故障があった場合など、何らかの不具合があったとき使用される言葉です。

不動産を売却後に、買主様が不適合の事実を知った場合、原則として売主様は「契約不適合責任」を負い、その不適合の事実に対して追完請求・代金減額請求・解除(催告・無催告)・損害賠償請求する手段があります。この対象となるのは売主様が契約上、目的物の種類・品質及び数量が契約の内容に適合しない物件を引渡した場合となります。また民法改正により、買主様が不適合の事実(数量を除く)を知った日から1年以内に売主に通知すれば(且つ5年以内に権利行使しなければ時効)、売主様は契約不適合責任を負わなければならないとしていますが、これでは売主様は際限なく契約不適合責任を負うことになるため、個人が売主様の取引の場合は、責任範囲を限定したうえで、責任を負う期間についても引渡し後3ヶ月に定めているのが一般的です。また設備などは更に期間が短く、1週間程度に定めていることが多いです。このように売買契約書には契約不適合責任の期間や範囲が記載されているので確認してみましょう。

中古住宅は新築住宅より価格が抑えられている分、建てられてから一定期間利用されているわけですから、もちろん多少の不具合はつきものです。そのような中古住宅の取引を行う際には、例えば「引き戸の立て付けが悪い」「照明が一部壊れている」などの不具合について、売主様・買主様の双方が認識した上で、売買を行うこともままあることです。

また中古取引の中には、目的物の種類・品質及び数量が契約の内容に適合しない場合の売主様側の負担を軽減するため、契約不適合責任を免責とする特約を盛り込んで契約するケースもあります。しかしその際になにか不具合が見つかった場合、全て買主様が自己責任で補修することになってしまい、買主様にとってリスクの大きい取引となってしまいます。買主様は契約前に必ず契約不適合責任についてどのように定められているか確認されたほうがよいでしょう。

瑕疵保険ができるまで

2000年に施行された住宅品質確保促進法(以下「品確法」)では、新築住宅の基本構造部分及び雨水の浸入を防止する部分に瑕疵(欠陥)があった場合、売主様は10年間の瑕疵担保責任を強制されていました。しかし、2005年の耐震偽装事件(姉歯事件)では、倒産した企業から補修費用が負担されず消費者が泣き寝入りとなる事態が発生し、大きな社会問題となりました。これを受け、国は2007年に「特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律」(以下「瑕疵担保履行法」という)を制定。同法は、すべての住宅供給業者に、供給戸数に応じた保証金を供託するか、もしくは保険に加入することのいずれかを義務としました。こうして瑕疵担保責任を負う側の業者が倒産などで資力がなくなった場合のバックボーンとして、消費者を保護し保証を行う仕組み「住宅瑕疵担保責任保険(以下かし保険)」が誕生しました。

かし保険は通常の保険会社と異なり、国土交通大臣が指定した「住宅瑕疵担保責任保険法人(以下瑕疵保険法人、現在5社あります)」しか扱えない保険で、住宅供給事業者に対してかける保険となります。元々は新築住宅のみが対象だった「かし保険」ですが、その後リフォーム工事を対象とするもの・中古住宅を対象とするものの3種類に拡大しました。新築用とリフォーム工事用は、住宅を提供する(またはリフォーム工事を行った)事業者が瑕疵保険法人に申込みを行い、保険に加入することとなります。また中古住宅においてもいわゆる買取再販などの事業者が売主様となる場合は同様に、売主様が直接保険法人に申込みます。個人間売買で個人が売主となる場合のみ少し趣が異なり、この場合はまず買主様が検査会社に対して申込み、検査会社が瑕疵保険法人の保険に入り、なにかあった場合は検査会社が保険を元に買主を保証する制度となっています。

いずれの場合も、この制度を利用するためには、「対象となる建物の検査を行い、基準に適合すること」「その他一定の条件を満たしていること」などの条件を満たす必要があります。

ジャパンホームシールドの「既存住宅かし保証」

ジャパンホームシールドの「既存住宅かし保証」は、個人間売買の場合に利用いただく保証制度です。物件の売主様が宅建事業者の場合は弊社のような検査会社では受付ができませんのでご注意ください。(売主様が宅建業者様の場合は瑕疵保険法人へ直接ご依頼いただく必要があります)。

メリットとして、本保証を利用いただくと引渡し後の中古住宅について一定期間、保証対象部分における不具合による損害を補償します。保証の対象となる部分は「構造耐力上主要な部分」、「雨水の浸入を防止する部分」および「給排水管路(オプション)」です。なお、一般的な契約上の「隠れた瑕疵」の全てが保証されるとは限らず、例えばシロアリによる被害や住宅の土地に関する瑕疵などは対象外となります。また引渡し後に行った増築・改築部分に起因する不具合(例えば新しく取り換えた窓から雨漏りした場合など)も保証には含まれませんのでご注意ください。

なお、かし保証の利用は、引渡しまでに手続きを完了することが必要です。保証の利用にあたっては事前に検査を行い、基準に適合している必要があります。なお、ジャパンホームシールドが行う場合、この検査は宅建業法に定められた「建物状況調査」を兼ねた検査を行っております。

保証利用の流れは、検査申込み~検査結果の報告書発送まで約2週間、そこで検査に適合したのち、かし保証を申込んでから保証書が発行されるまで約2~3週間かかりますので、引渡しまでのスケジュールを逆算して進めることが肝要です。また、検査結果が不適合となった場合でも、指摘箇所を補修した上で再検査を行い適合すれば、既存住宅瑕疵保証に申込むことができます。この場合は補修にかかるスケジュールも引渡しまでの一連の流れに組み込む必要があり、売主様・買主様双方の調整が必要です。補修の際の費用を売主様・買主様のどちらが負担するかについては、きちんと調整をしないとトラブルになりかねませんので、この点については別途記事をご覧ください。

補修の際の費用負担について(第6回)

■サービスの流れ

■保証期間・保証金額

保証期間
最初の建物状況調査を行った日から1年間or5年間
保証金額
500万円または1000万円

※かし保証の利用には検査費用とは別途に保証料がかかります

■かし保証を利用するための、検査の申込みに必要な書類

既存住宅かし保証を利用すると、「既存住宅売買瑕疵保険付保証明書」が発行されますが、この書類は税制における「耐震性を証明する書類」として活用できるため、築年数が経過した住宅でも、住宅ローン減税など税制優遇を適用することができます。これは買主様に事前の説明を行うことで、資金プランが広がり、後々のリスクヘッジに繋がります。詳しくは次回8話で説明します。

※住宅ローン減税は条件や年度により、内容や必要要件が異なる場合がありますのでご注意ください。
実際のご利用の際には税務署等所轄官庁などに必ずご確認ください。

税制優遇について(第8回)

まとめ

  • 売主様は、目的物の種類・品質及び数量が契約の内容に適合しない物件を引渡した場合、「契約不適合責任」を負うのが一般的。
  • 契約不適合責任を「免責」とする売買取引もあるが、もしもの時、誰も責任を取れないので、買主様にとって非常にリスクが高い取引となるため注意が必要。
  • 「かし保険」(ジャパンホームシールドでは「既存住宅かし保証」と呼称)は、保証対象部分における隠れた瑕疵の補修費用、損害賠償費用などの損害を補償するもの。
  • 「かし保険」の保証を受けるには、検査を行い、一定の基準を満たすことが必要になる。(ジャパンホームシールドの場合、この検査は建物状況調査を兼ねる)
  • かし保証を利用することで発行される「付保証明書」があれば、築年数が古い物件でも住宅ローン減税などの税制優遇が受けられる。
  • かし保証を利用するには保証書発行まで全体で約1ヶ月程度かかるので、引渡しまでのスケジュールを逆算し調整する。

更新日:2021.01.21

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