瑕疵保険加入で住宅ローン減税の対象に?中古住宅で控除を受けるには?

瑕疵保険で中古住宅の住宅ローンが減税?
~築20年以上の古い物件でも数百万円お得~

下記の条件をクリアした中古住宅をローンで購入する場合、借入額の1%を所得税・住民税から控除できる制度を「住宅ローン減税制度」といいます。たとえば3000万円以上の借入をすると、年間約30万円、10年間で約300万円もの控除が受けられるため、住宅購入者にとっては大きな利益があります。「新築住宅」での減税は多くの人が知っているものの、中古住宅購入で減税を受けられることは意外に知られていません。住宅ローン控除を受けるにあたり、新築住宅との一番の違いは「築年数の制限があること」。以下、住宅ローン減税を受ける要件を見てみましょう(以下要件は2018年12月時点)。

【新築住宅と中古住宅の共通条件】

  • 床面積(内法面積)が50平方メートル以上
  • 自己居住する住宅であること(=投資用はのぞく)
  • 新築または中古住宅取得の日から6カ月以内に居住し、その年の12月31日まで継続して居住すること
  • 借入期間が10年以上の住宅ローンであること
  • 居住の年の前後各2年間(合計5年間)に、3000万円特別控除や特定居住用財産の買換え特例などの適用を受けていないこと
  • 合計所得が3,000万円以下であること

【中古住宅の個別条件】

以下2つの条件のうち、いずれかを満たす必要があります。

(1)築年数が以下の規定の年数以内であること

  • 鉄筋コンクリート造の「耐火建築物」の場合:築25年以内
  • 木造などの「耐火建築物以外」の場合:築20年以内

(2)耐震レベルが以下の基準をクリアしていること

  • 耐震基準適合証明書を取得する
  • 住宅性能評価書(耐震等級1以上)を取得する
  • 既存住宅売買瑕疵保険に加入する

言い換えれば、築年数が規定の年数を過ぎていても、「既存住宅売買瑕疵保険」(以下、瑕疵保険)に加入できれば、住宅ローン控除が受けられるということになります。では、瑕疵保険とは何か、加入の手続き等について次の章でお伝えします。

瑕疵(かし)保険とは?

住宅の「瑕疵」とは、土地の造成不良や建物に雨漏り、設備の故障があった場合など、住宅に何らかの不具合があることをいいます。不動産を売却後(一般的に期間は3ヶ月程度)に、目的物の種類・品質及び数量が契約の内容に適合しないと原則として売主様は「契約不適合責任」として責任を負い、追完請求・代金減額請求・解除(催告・無催告)・損害賠償請求を行うことになります。この費用をある一定の範囲で保証するのが「瑕疵保険」です。

「瑕疵保険」の保証を受けるには、

  • 対象となる建物に、建物状況調査など定められた検査が入ること
  • 検査で一定の基準を満たさないと保険に入れない

という条件を満たす必要があります。

瑕疵保険が活用できるその他の制度
~すまい給付金~

瑕疵保険が活用できる給付制度としては、住宅ローン減税のほかに「すまい給付金」があります。「すまい給付金」は、消費税引上げによる住宅購入者の負担を緩和するために創設されました。消費税率8%時は収入額の目安が510万円以下の方を対象に最大30万円、10%時は収入額の目安が775万円以下の方を対象に最大50万円を給付するものです。中古住宅については買取再販物件など、消費税の課税対象となる住宅が対象となります(個人が売主となっている個人間売買の中古住宅の取引は対象外となります)。また、重要なのは「住宅ローン減税」と併用ができることです。よって、買取再販物件販売の際に、瑕疵保険を取得するさらなるメリットとして提示ができるでしょう。

支給の対象要件は、上記の住宅ローン減税を受ける要件に加え、以下のように「売買時等の検査」を受けていることが要件となります。(※住宅ローンの利用有無で支給要件は異なります)

■すまい給付金の支給要件(中古住宅)
  • 売主が宅地建物取引業者である中古住宅
  • 床面積

床面積が50m2以上である住宅

  • 売買時等に第三者の現場検査をうけ現行の耐震基準及び一定の品質が確認された以下の1~3のいずれかに該当する住宅
1:
既存住宅売買瑕疵保険へ加入した住宅
2:
既存住宅性能表示制度を利用した住宅(耐震等級1以上のものに限る)
3:
建設後10年以内であって、住宅瑕疵担保責任保険(人の居住の用に供したことのない住宅を目的とする住宅瑕疵担保責任任意保険を含む)に加入している住宅又は建設住宅性能表示を利用している住宅

(支給要件は国土交通省「すまい給付金」サイトより抜粋)

ジャパンホームシールドの「既存住宅かし保証」

ジャパンホームシールドの「既存住宅かし保証」は、個人間売買に適用可能な保証となっています。売主が宅建業者様の場合は受け付けておりません。本保証は引渡し後の住宅について、保証対象部分における隠れた瑕疵による損害を補償します。なお、隠れた瑕疵全てが保証されるわけではなく、

  • 木部の腐食など構造耐力上主要な部分
  • 雨漏りなど雨水の浸入を防止する部分
  • 給排水管の故障など給排水管路部分(特約付帯)

における瑕疵に限ります。また、引渡し後に行った増築・改築部分は保証の対象には含まれませんので注意が必要です。

申込みの流れとしては、

  • 検査のお申込み~検査日程調整~検査実施
  • 報告書の発送(かし保証の適合・不適合を記載)
  • 保証書発行依頼(かし保証お申込み)~保証書発行

となります。

なお、かし保証の申込みやそれに伴う検査は、ジャパンホームシールドにおいては2018年4月に改正となった宅建業法における、「建物状況調査」と共通のものとして行われ、同調査を兼ねることができます。また住宅ローン控除を受けるにあたり、検査から保証の適用までは「引渡し前」に行うことが必須となりますが、保証書が発行されるまでスムーズに進んでも約1ヶ月〜1ヶ月半かかるので、引渡しまでのスケジュールを逆算して進めることが肝要です。

また、検査結果が不適合となった場合でも、指摘箇所を補修した上で再検査を行い基準に適合すれば、かし保証に申し込むことができます。この場合は補修工事にかかるスケジュールも引渡しまでの一連の流れに組み込む必要があり、売主様・買主様双方の調整が必要です。また補修費用を売主様・買主様のどちらが負担するか、きっちりと調整しておかないとトラブルになることもあります。この点については別途記事をご覧ください。

補修の際の費用負担について(第6回)

かし保証について(第7回)

住宅ローン減税に絡むトラブル事例

Case
買主様が、瑕疵保険加入で住宅ローン減税ができることを知ったのが「引渡し後」で、「なぜ教えてくれなかったのか」とクレームに

瑕疵保険に入った後、住宅ローン減税を利用するには、引渡し日より前に瑕疵保険契約が締結された旨を示す「付保証明書」を提出する必要があります。そのため、引渡しが終わってしまうと、その後いかに買主様が希望されようと、瑕疵保険を用いた住宅ローン減税の利用ができなくなってしまいます。

このことを頭に入れた上で進めておかないと、引渡し後にその事実を知った買主様から「教えてくれたら事前に手続きできたのに、なぜ教えてくれなかったんだ!プロとしての職務怠慢だ」と仲介事業者様にその責任を追及してくることがあります。

住宅ローン減税は10年間で数百万という大きなお金が絡む内容となり、クレームも大きくなりがちな部分がありますので、ぜひお気を付けいただきたいところです。

前述のように、瑕疵保険に入る前段の準備には時間がかかりますので、物件契約前にローン減税を希望するかヒアリングしたり、きっちりと瑕疵保険のメリット説明を事前に行い要望を確認するなどで、トラブルを防ぐことが出来ます。

さらに、必要書類や検査時の注意事項は以下となります。

  • 検査・瑕疵保険申込に関する必要書類が揃って提出できるか
  • 検査において、規定か所のうち検査できなかった箇所がある、(例えば小屋裏・床下の点検口がない住宅では、それぞれ確認を行うことができず、瑕疵保険の検査基準に不適合という判断となりますので、必要な検査が全箇所できるのかをお申込前にご確認ください。)
  • 瑕疵保険を申込む際の「耐震性に関する書類(確認済証、台帳記載事項証明など)」が準備できるか(昭和56年6月1日以降に建築確認を行ったことが確認できる書類、または現行の耐震性への充足が確認できる証明書などになります)

まとめ

  • 「瑕疵保険」へ加入すれば、築20年以上の住宅購入でも「住宅ローン減税」を受けることができる。
  • 買取再販物件の場合、「瑕疵保険」に加入を行うと「住宅ローン減税」に加えて、「すまい給付金」の要件を満たせる。
  • 「瑕疵保険」は引渡し後に加入できないことに加え、手続きに時間がかかるため、売主・買主の事前調整や、早い段階でのヒアリング、メリット説明が必要。

更新日:2021.01.21

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