2018.10.19法律相談室

集中豪雨や地震など、自然災害で訴訟にならないために。

文=秋野卓生(あきの たくお)弁護士

地盤トラブルとの関わり

私自身、平成10 年から、主に住宅会社の立場から、建築裁判に関与しています。

建物の建て替え費用の賠償を求める裁判の中でも「地盤沈下」→「建物の傾斜」→「建物の建て替え費用の賠償請求訴訟」という論点の裁判も対応をして参りました。

 

そもそも、地盤沈下をしているのか否かが争われる紛争、地盤沈下により建物変形が生じた場合、どのような補修方法が相当なのかが争われる紛争など、紛争形態は多岐にわたります。大きな視点としては、「建物の建て替えを要するか否か」「個別の補修で対応可能か」という争点が多くあったという印象です。

 

他方で、この手の裁判が発生した原因は、小規模建物の場合、建物建築前に地盤調査を正確に実施する文化が希薄であった事によるものと推測します。

しかしながら、現在は瑕疵担保履行法の施行もあり、地盤調査の実施は多くの住宅会社の常識となりつつあります。また、地盤保証制度の充実も裁判事例の減少に貢献しているものと思われます。

 

天災地変と地盤トラブル

集中豪雨や地震など、天災地変により地盤沈下が発生すると、建物が不同沈下する事例が生じます。そうすると、消費者は住宅会社に対応を要請し、住宅会社は造成会社等による責任か、自社の設計責任かを検討することになります。ケースによっては、過失割合の検討をすることとなります。

 

裁判事例では、地震など不可抗力による建物不同沈下について、基礎構造の設計ミスが地震によって明らかになったに過ぎないと不可抗力免責を認めない裁判例もあります。

法律相談室2017Summer①-

住宅会社は地盤に関する設計に責任をもつことが大事

住宅会社にとって重要な視点は、地盤に関する設計に責任を持つことです。「当社として地盤に関する検討は十二分に実施した」と言い切れる、専門家として責任感を持った仕事をすることであろうと考えます。

 

このような専門家責任を果たしている住宅会社は、地盤トラブルが生じても、しっかりと設計段階の経緯を消費者に説明をすることができます。そして、説明を尽くし、消費者の納得を得れば裁判とならずとも紛争は解決していくのです。

 

当事務所は、誠実な住宅会社をサポートする立場で、今後も裁判以前の段階で地盤トラブルを解決する能力を高めて行きたいと考えております。

 

秋野弁護士

秋野卓生(あきの たくお)弁護士

弁護士法人匠総合法律事務所代表社員弁護士として、住宅・建築・土木・設計・不動産に関する紛争処理に多く関与している。2017年度より、慶應義塾大学法科大学院教員に就任(担当科目:法曹倫理)。管理建築士講習テキストの建築士法・その他関係法令に関する科目等の執筆をするなど、多くの執筆・著書がある。

 

 

 

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