熊本の住宅会社が伝える「震災への備え」
2016年4月14日~ 16日にかけて断続的な強い揺れに襲われた熊本地震では、わずか3日間で2回の震度7、2回の震度6強、3回の震度6弱という日本の災害史上でも前代未聞の揺れを記録。この地震で木造住宅を中心に大きな被害が出たこともあり、地元住宅会社様は修繕や建て替えなどの対応に追われました。
熊本市内の3社の地元住宅会社様の事例から、発生確率が高まっている巨大地震対策の一環として、住宅会社様の準備のポイントを時系列でまとめました。
事前の7つの備え
POINT1. エコキュートの転倒対策
震災後、真っ先に来たのがエコキュートの破損や倒壊の連絡だった。エコキュートの補修は、「設備屋」や「左官屋」と連携して対応しなければならず手間がかかる。また、過去に設置したものはアンカーボルトがなかったり、新しいものでもアンカーボルトが効いておらず抜けたものもあった。
施工の際には、告示やメーカーの取扱説明書に従った確実な固定方法を実施すること。また、過去物件で不安がある場合は、早めに対応しておくこと。
POINT2.計画的なOB客への連絡と訪問
震災後、すぐに全OBへ連絡や訪問ができれば理想だが、いざ震災が起きるとなかなかできない。
事前に情報の一元化と震災時の対応方法を決めておくことが必要。
POINT3.人と拠点の確保
緊急時には、社員・職人の宿泊施設や食料の確保をどれだけ早くできるかが鍵。人件費はどんどん上がり、職人は高い賃金のところへ移っていく。便乗して他県からも入ってくるが、質の良い職人を確保できるとは限らない。
万が一の時のための、人と拠点をどう確保するか計画をしておくこと。
POINT4.備蓄品の確認、災害対応計画の策定、訓練の実施
ブルーシートや土のう袋が不足する。ブルーシートは安いものだとすぐに劣化して、やり直しになるため注意が必要。
POINT5.他県の建築事業者との交流
情報交換ができる他県の同業者がいると、緊急時に援助や情報を得ることができる。
常時から他県の建築事業者との交流を行うこと。
POINT6.建て替え時の提案
震災後は、以前より耐震を気にする施主が増える。
建て替えの際、希望に対応できるような提案の準備をしておくこと。また、平時から耐震性の高い住宅を提案するように心がける。
POINT7.地震保険への加入
熊本では、地震が起きないと信じて加入していない人も少なくなかった。
地震保険への加入をすすめておくこと。
震災直後(1週間)の対応
状況と対応:水や電気が止まった状態が続いたため、まずは働ける環境(安全の確保、ライフラインの確保)を整備することが肝要。OB客からの電話問い合わせに対応することが求められる。問い合わせはエコキュートが多数。その他、「まずは来てくれ」という問い合わせも多数。
POINT1. 無理な対応はしない
マニュアル・計画に沿った対応を進めることになるが、大きな余震などが続くと、二次災害の可能性もあるので、状況に応じた臨機応変な対応を。無理な対応はせず、自宅待機の判断も大切。
POINT2. 時間的な約束はあまりしない
時間的な約束はあまりしない人がいない、物がない、交通状況により訪問できないという事態が発生することから、時間的な約束をあまりしないこと。「待っていたのに来ない」というトラブルが発生することもある。
地震発生後、一ヶ月目の対応
状況と対応:チームを組み、担当を割り振って問い合わせ先を訪問。即席で作ったチームでの対応となったため、書類の紛失や連絡不備によるクレームにも繋がった。
POINT1. 被害の小さいエリアこそ顧客対応を慎重に
被害が大きいエリアでは、周りの家も同様に被害があるため、小さい被害は気にしないケースが多い。しかし、被害が小さいエリアでは、小さい被害でも大きなクレームになりやすいことから慎重な顧客対応が必要。
POINT2. 社員のケアを大切に
社員自身も屋根にのぼって瓦の修理をするなど、二次災害のリスクがあることから、予防策の検討が必要。また、施主対応により精神的に追い詰められるため、心のケアを行い、きちんと休みを取らせることが大切。
地震発生後、二ヶ月目の対応
状況と対応:状況確認の上で仕掛り物件を再開。建て替え物件や新規案件の受注を開始。
POINT. 新規受注は慎重に(物価が上昇)
震災後に着工数は増加するが、会社の規模を超えた受注をすると、自分たちの首を絞めることになる。社員や職人が不足するため工期は延び、資材や職人の単価が上がり、原価は増加していく。新規受注は慎重に進めること。
まとめ 「震災への備えチェックリスト」
震災が起きたとき、トラブルが多いと、OB客対応だけで手一杯になってしまい、持ち出しも社員の負担も大きくなる。事前に対策を講じておけば、震災時のクレームを軽減でき、いち早く復興需要の取り込める。
下記にチェックリストとしてまとめましたので、ご覧ください。
地元住宅会社様からのメッセージ
災害の時は職人さんの手配が困難になるだけでなく、人件費も高騰します。施行中の物件は、契約時と状況が変わって、資材が高騰してしまうこともあります。困ったことに、建て替えの際には、現行の法律では家が建てられないような土地も出てきます。
有事の際にはこのような問題が起きる事も想定し、他社や職人と連携をとって動けるよう、災害対応の組織図とマニュアルをつくっておくことを皆様にはお勧めします。
そして、お客様対応は無理がない程度で素早い行動を。すぐに人を動かせなくても、お客様に電話連絡をして状況だけでも聞き取りをすることが肝要です。
JHS LIBRARY 編集部
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