2018.04.01ニッポンの地盤解説

都城盆地のおいたちとシラス

霧島山からの豊かな水を地下に貯える都城盆地。その都城盆地のおいたちと、南九州に厚く分布するシラスの性質についてジャパンホームシールドの吉井孝文が解説します。

シラス台地

写真提供:amanaimages(鹿児島県日置市)

文=吉井 孝文(よしい たかふみ)

都城盆地のおいたち

都城(みやこのじょう)盆地は、宮崎県と鹿児島県の県境にある霧島火山の南東麓に広がる構造盆地です。構造盆地という言葉は聞き慣れないかもしれませんが、簡単にいうと地殻変動によって作られた盆地を意味します。では、どういう地殻変動によって都城盆地が生じたか見てみましょう。

 

日本列島は弓なりに連なった島々の集合体です。これを島弧(とうこ)と呼びます。このうち、北海道の西半分から九州山地までは東北日本弧、西南日本弧と呼ばれる島弧で出来ています。ところが、南九州はこれらとは異なり、琉球弧と呼ばれる別の島弧の一部です。つまり、南九州は地質構造的には、南西諸島の一部と言えます。

図1東京大学出版『日本の地形7九州・南西諸島』をもとに作成3

図1 東京大学出版会『日本の地形7九州・南西諸島』をもとに作成

南西諸島に沿った東シナ海の海底には沖縄トラフと呼ばれる長い窪地があり、年々広がっています。これに押されて南西諸島は東へ動いています(図1の①)。

この動きにぶつかるように東からはフィリピン海プレートが押してきています(図1の②)。
これらの作用で琉球弧は弓なりに曲がり、都城盆地の東にある鰐塚(わにつか)山地は隆起します(図1の③)。

 

沖縄トラフの拡大は、宮崎平野から都城・志布志湾にかけての地殻を九州山地から引き離すように広げ、その結果、都城付近は陥没し、盆地底が形成されました。さらに、100万年前からの火山活動により、火砕流やシラス、土砂の埋めたてや浸食が繰り返され、谷地、湖と姿を変えながら、現在の都城盆地ができあがりました。南九州がいかに火山の影響を強く受けたかを想像できるのではないでしょうか。

図2南九州地図2

図2 南九州地図

 

シラスとは?

「南九州の土」といえば最も有名なものはシラスでしょう。シラスとは火砕流堆積物です。現在の鹿児島湾のうち、桜島から北側はよく見ると海岸線が丸く見えます(図2)。実はここは、姶良(あいら)カルデラと呼ばれる火山が水没してできた海です。かつて、ここから噴出した入戸(いと)火砕流と呼ばれる火砕流が南九州を広く覆い尽くしました。これがシラスです。今からおよそ2万5千年前の出来事です。

 

シラスはその名前のとおり、概ね白い砂のような土です。「砂のような」というのは、普通の砂の場合、山岳の岩石が砕けて細かくなった粒でできていますが、シラスは火山から噴出した軽石粒が砕けて積もったものなので、粒は砂に見えますが、その地層は砂とは性質が異なります。

 

住宅地盤としてのシラス

地盤として考えた場合に問題となる特異な性質は、雨水の侵食に非常に弱いという点でしょう。切土した崖が垂直近くまで自立するのに、大雨にさらされるとたちまち崩れるのです。シラスの元は軽石なので、崖はシラスの粒の噛み合いだけで保たれています。ところが、シラスの粒には穴がたくさん空いていて、水をよく含むため、大雨が降るとすぐに水の勢いがたまって削られてしまうのです。シラス地盤で構造物を作る場合は、この豪雨対策が非常に重要と言えるでしょう。

 

ただし、これは逆に言えば、切土斜面においては排水対策が適切に行われていれば、安定した斜面を形成しやすいことを意味します。

擁壁の水抜き穴や排水路など、排水工は目立たない形で設置されていますが、これらのもつ重要性を少しでも皆さんに感じていただけると幸いです。

 

吉井さんのこぼれ話

縁起物としてのシラス

都城市今町の愛宕神社では年の瀬にシラスをまいて土地を清める風習があります。

かつては家庭でも行われていたそうです。白いシラスを塩や雪にみたてているのです。(文献5 )また、知覧町の門松は、円錐状に盛ったシラスに笹のついたままの竹や松・ゆずり葉をたてて、シラスには薪を3本置きます。

「かまどの火を絶やすことなく、三度・三度食べられますように」「この土地に根付いていられますように」「薪の鋭い割れが邪気をはらう」などの意味があるそうです。(文献6 )

水源としてのシラス

砂利・玉石層、シラス層をフィルターにして濾過された水は適度なミネラルを含む地下水になります。都城ではこの地下水が主な水源です。(文献6)

建材としてのシラス

内装の塗壁材に使えば室内の消臭・調湿効果が期待でき、外壁に塗れば水蒸気は通しても雨水は通さない壁になるそうです。また、舗装材に使えば透水性の良さが庭の水たまりを防いでくれるそうです。地元の土を有効活用した、とてもエコな使い方ですね。(文献7 )

 

吉井さん四角

吉井孝文(よしいたかふみ)

技術士(応用理学部門:地質)

地盤品質判定士

2006年ジャパンホームシールド株式会社に入社、日本全国の住宅地盤の安全性評価業務に携わる。2011年より同社地盤技術研究所研究員、現在に至る。

趣味:気になる地形をバイクで見に行くこと。バイオリン。

 

 

 

参考文献:

1.町田ほか編(2001)「日本の地形7 九州・南西諸島」東京大学出版会

2.宮崎県高等学校教育研究会理科・地学部会 編(1979)「宮崎県地学のガイド」コロナ社

3.山内豊聡(1977)「シラスの特性と問題点」土質工学会論文報告集17(1)

4.小南ほか(2017)「宮崎県都城市における地盤陥没被害の概要と地盤調査の報告」 生産研究 69-6

5.日テレNEWS24 20161229日「神社で年越しの風習「シラスまき」 宮崎」http://www.news24.jp/articles/2016/12/29/07350319.html 201827日アクセス

6.手打地区だより No.18 平成2212月「 手打地区コミュニティ協議会」発行

7.高千穂グループHP http://www.takachiho-group.com/eco/index.html 201827日アクセス

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JHS LIBRARY 編集部

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