2017.06.08地震 , 防災 , 特集 , 備え

【専門家に聞く】 第1回 地震が起きる前から揺れに備える

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防災は「まず知る」ことが大切

気象予報士・防災士の蓬莱大介(ほうらいだいすけ)です。普段はテレビで天気予報を伝えていますが、ここではテレビの限られた時間では話しきれない防災の話しを6回にわけ、「さまざまな災害に対してどう備えればいいのか」ということを気象予報士の観点からだけはなく、防災士の観点からも皆様と一緒に考えていきたいと思います。

 

 

「わからないから結局やらない」を断ち切る

1.まず知るということ

日本という国は、自然の恩恵をたくさん受けられる国ですよね。海と山が近くて、季節がはっきり分かれていて、食べ物もおいしい。ただ、その反面、自然の脅威にさらされやすい国でもあります。台風やハリケーンは世界で1年間約80個発生し、そのうち約11個が日本に接近し、約3個は上陸します。地震に関しては、世界で起こっている約10分の1にあたる地震が日本及び、その周辺で発生しています。震度5強以上の地震の発生数は、2011年3月から2017年3月時点の7年間でなんと全国で59回にもなります。周期的に発生する南海トラフ大地震、いつどこで起こってもおかしくない活断層地震。自分の住んでいる場所が海溝型の揺れにより影響を受けやすいのか、直下型の揺れにより影響を受けやすいのか、また頑丈な地盤の上に住んでいるのか、それとも埋立地で揺れやすい地盤のエリアなのか、ある程度知っておく必要があります。できれば、その場所が過去にどれくらいの規模の地震があった場所なのかまで知っておくといいでしょう。

 

2.防災はめんどくさい

防災や備えはやった方がいいのはわかってはいるけれど…という人も多いのではないでしょうか?防災は忙しい日常の中でどうしても後回しにしてしまいがちです。まず、どの程度備えるのが適切なのかわからない→そもそも、その土地がどういう環境なのか知らない→ただ不安感だけある→結局、何もせず後回しになっている。こういうパターンではないでしょうか。

自分の住んでいる地域の地盤の強さ、揺れやすさ、液状化エリア、強い地震の発生確率、指定されている避難所の場所、これらの情報をそれぞれかき集めるのは一苦労ですよね。

3.自分の家族でルールを決める所から始めよう

避難のルールは家族で共有揺れたら自分と子供の身の安全を守ることが最優先。揺れが収まったら火の元を確認する。靴をはいて出口の確保をする(ガラスを踏まないようにいつでも避難できる準備)。このような行動手順を家族で共有しておくのです。

 

そして、普段からどこの避難所に集まるか決めておきます。連絡が直接取れない時の中継連絡先(いとこや親せき)も決めておきます。まず、これを決めるだけでも不安感はだいぶ少なくなると思います。備えの第一歩。心の備えです。

4.その人にとって必要な分を選び取ればいい

次は暮らしの備えです。「地震の備え」と調べると、ありとあらゆる備えの情報が出てきます。すべてできればいいのですが、果たしてそれは可能なのでしょうか?例えば、政府の指導では「水や食料は1週間分備蓄する」ことを勧めています。一般的に「人は1日3ℓの水が必要」とされていますので、4人家族だと3ℓ×4人×7日分=84ℓにもなり、ペットボトル42本分です。広い家だといいですが、マンションの場合は現実的に難しくないですか?「もしもの時にお風呂の残り水を貯めておく」というのを聞いたことがあると思いますが、風呂上がりは早目に浴槽の掃除をしたいですよね。

 

こういうのは、すべて完璧にやろうとすると挫折してしまいます。なので、自分の家庭でできる範囲の必要な分を、まずやっていけばいいと思うのです。飲料水に関しては、2箱分(12本分)くらいは常に冷蔵庫の横にあるとか、風呂の水は早目に湯をはる習慣にして、入る時に追い炊きするようにするなどしてはどうでしょう。食料の備蓄に関して、私のことで例を挙げますと、我が家では乳児がいますので粉ミルクとおむつは最優先に余裕をもっておいています。というのも、大人は1日くらい食事を我慢できますが、乳児は半日さえも我慢できないと考えるからです。大人の食事は、缶詰やインスタントを棚1段分くらい置いています。

 

暮らしの備えは、家族に必要だと思う分をできる所から、少しずつやるというのが大切なのではないでしょうか。膨大な備えの情報から必要な分だけピックアップしていけばいいのです。一気に完璧にやろうとすると挫折して、結局何もやらなくなってしまいます。

 

5.いざという時に必要なもの

まず、停電に備えて情報源となるラジオはあった方がいいでしょう。

暗闇の中、避難するための懐中電灯も寝室やリビングに置いておくといいと思います。

一軒家の方でもし置くスペースがあれば、スコップ、バール、のこぎり、消火器などあればいざという時に役立ちます。マンション住まいの方であれば、避難経路の確認と消火器がどこにあるかくらいは最低限知っておくといいでしょう。

 

家の備えをする前に

家や地盤を診断しよう建物に関して、どのくらい耐震基準を満たしているか。その土地にあった対策は、どの程度すればいいかは専門家にお任せしなければできません。

建物だけでなく、地盤から調べてもらい、どの程度の対策をすればいいのかを診断してもらうのです。対策をとるにしても、耐震構造・免震構造・制震構造とあります。自分で判断するのは難しいですよね。

 

余分な費用を出さずに必要最低限で済ませるためにも、まずは診断してもらうことをお勧めします。自治体によっては、耐震診断は補助金が出る場合がありますのでチェックして下さい。

 

まとめてくれている情報源から知る

「地盤サポートマップ」と検索すると、地盤の強さ・揺れやすさ・液状化エリア・避難所・現在・過去の航空写真・地震発生確率などすべて「まとめて知る」ことができます。これまでバラバラに調べないといけなかったものが便利に一括して、パソコンと携帯からでも無料で見ることができます。

自分の住んでいる環境を知ることで、実際に地震の備えをしてみようかなとモチベーションが上がり、あとどの程度備える必要があるかも考えられます。

防災や備えは「自分のため」と思うと行動に移しにくいです。人間の心理として「自分だけは大丈夫」という心のバイアス(思い込み)がかかるからです。なので、「愛する家族のために備える」と思うと行動に移しやすいですよ。

まずは、知ることから始めてみてはいかがでしょう。

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蓬莱 大介

気象予報士・防災士。早稲田大学政治経済学部を卒業後、俳優を目指していたが、書店でたまたま気象予報士の資格を知り一念発起。2009年10月に合格し、11年から読売テレビで気象キャスターに就く。レギュラー番組は「かんさい情報ネットten.」「情報ライブ ミヤネ屋」「ウェークアップ!ぷらす」。著書『クレヨン天気ずかん』(主婦と生活社)