2019.01.09住宅 , 耐震性

耐震等級とは?地震に対する段階別の性能と知っておきたいポイント

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耐震イメージ写真

家を購入したり建てたりする際には、耐震性能のランクを示す「耐震等級」という言葉がよく用いられています。地震の被害に見舞われることが多い昨今、「耐震」という言葉をよく耳にするようになりました。「耐震等級」という言葉についても何となく意味がわかったようなつもりになってしまいがちですが、実際にその意味合いをよく理解できている人は稀なのではないでしょうか。

「耐震等級」についての基礎知識を身につけておくことが、安心・安全な家づくり・家選びのメリットにつながります。ここでは、「耐震等級」に関する基礎知識を紹介いたしますので、ぜひ参考にしてください。

 

耐震等級の基礎知識

家づくり・家選びにおける条件として、地震への強さを重視する人は多いものです。しかし、建築の素人である私たちには、図面を見ても家の強度をどのように評価していいかがわかりません。そんな素人でもわかるような目安として表示されているのが、「耐震等級」という基準です。まずは、「耐震等級」の概念と、家の強度を決定づける要素について見ていきましょう。

 

●耐震等級とは

耐震等級は、地震に対する建物の強度を示す指標のひとつです。住宅の性能表示制度を定める「品確法」に沿って制定されたものです。建物の耐震性能によってランクが3段階に分かれており、その数字が大きければ大きいほど、建物の耐震性能が高いため、建物を建てたり買ったりする際の目安になります。耐震等級というのはそもそも、地震で建物が崩壊しないよう、地震に対する構造躯体の倒壊・崩壊等のしにくさを表示したものです。

 

免震・制震という言葉もよく耳にしますが、これらは、耐震とは違う方向から建物を守ろうとするものです。免震は、建物に入る地震の揺れ幅を軽減し、家の中と建物そのものの安全を守ろうというものです。地震の揺れが建物に伝わりにくい構造を目指すものです。さらに、制震は建物内部にダンパーなどの「制震部材」を組み込み地震の揺れを吸収するというものです。

 

●建物の耐震性に影響する主な要素

建物の耐震性を計算するうえで大きく影響するものが、次の4つの要素です。まず1つ目は「建物の重さ」。建物そのものや屋根が軽ければ軽いほど、建物が地震の揺れに対しての振幅が小さくなります。さらに2つ目は「耐力壁」。これは、地震や風などで生じる横からの力に抵抗できる壁のことで、耐力壁が多ければ多いほど耐震性に優れていることになります。

 

建物の一部や全体が、地震力の作用で崩壊しそうになる場合、各階の柱や耐力壁、筋かいをどのように配置するかで、水平方向の耐力(保有水平耐力)が決まります。続いて3つ目は、「耐力壁や耐震金物の配置場所」も大切な要素です。せっかく耐力壁や耐震金物を使っていても、その効力を発揮できる場所にバランスよく配置されていなければ、最大限の効果が期待できません。

 

建物の隅角部分に耐力壁を配置したり、上下階の耐力壁の位置を合わせたりするなどの工夫が必要です。また、4つ目は「床の耐震性能」を高めることで、建物の耐震性を高めることができます。

 

耐震等級の区分

耐震等級の3つの区分は、どのような基準をもとに設けられたものなのでしょうか。ここでは、耐震等級ごとに、その耐震性能を確認していきましょう。性能表示制度の耐震性計算は、建築基準法の耐震性の計算とは多少異なりますが、ここでは概略の説明をするので詳細は省略します。

 

●耐震等級1

「耐震等級1」は、建築基準法で定められた、建物に備わっているべき最低限の耐震性能を満たしていることを示すもので、震度6強から7に相当する、数百年に一度起こる大地震に耐えうる強度を持つように構造計算されています。2016年4月に発生した熊本地震は震度7でしたが、このレベルを想定したものと考えればわかりやすいでしょう。

 

耐震等級1であれば、震度5程度の、数十年に一度の頻度で発生する地震に際しては、建物の損傷防止に効果があるとされています。ここで定められた「震度」に幅があるのは、震度という値そのものが、地震の被害状況から定められるためです。実際に生じた地震の性質によって震度も変わってくるため、あくまでひとつの目安として考えるべきです。

 

●耐震等級2

耐震等級2は、上で示した耐震等級1の1.25倍の倍率の耐震強度があることを示しています。「長期優良住宅」として認定されるには、耐震等級2以上の強度を持たねばなりません。災害時の避難場所として指定される学校や病院・警察などの公共施設は、必ず耐震等級2以上の強度を持つことが定められています。

 

●耐震等級3

耐震等級3は、耐震等級1の1.5倍の耐震強度があることを示しています。住宅性能表示制度で定められた耐震性の中でも最も高いレベルであり、災害時の救護活動・災害復興の拠点となる消防署・警察署などは、その多くが耐震等級3で建設されています。

 

耐震等級について知っておきたいポイント

防災は「まず知る」ことが大切建物を購入したり建てたりする場合、耐震等級について一定の理解があれば、より安全・安心な選択ができるようになります。ここでは、一般的にあまり知られていない耐震等級に関するポイントを紹介していきましょう。

 

 

 

●耐震等級が不明な建物もある

耐震等級という建物の強度を示す指標(住宅性能表示制度)は、2000年に制定されました。そのため、2000年以前に建てられた建物に関しては、耐震等級の評価書が用意されていないこともあります。また、住宅性能表示制度そのものが任意のため、必ずしも評価書を取得する必要がありません。そのため、耐震等級が明らかでないケースも少なくないのが現状です。

 

こういった場合は、築年数などをもとに、その耐震性を調査する方法がとられます。新耐震基準が定められた1981年6月1日以降に建築されている建物は、新基準を満たしているので、耐震等級1以上の強度があると見なせるのです。

 

●耐震等級1の建物も多い

マンションの場合は、木造住宅などと比較して、耐震等級をクリアするハードルが高く設けられています。また、耐震等級を上げるためには、柱や壁の位置などで間取りの自由が制限されるため、居住性が大きく損なわないようにと、あえて耐震等級をあげずに建築されているマンションも少なくありません。

 

●耐震等級は建築時に自分で選べる

耐震等級はそもそも、住宅などを建てる際、その耐震性能を施主にわかりやすく伝えるために制定されたものです。耐震強度に関する施主の要望を伝えるためのものだともいえます。家を建てようというときは、ハウスメーカーや工務店ごとに定められた耐震等級の基準に関わらず、施主側が耐震等級を決められるのが、本来の流れです。素人だから口出しすべきではないなどといった遠慮は必要ありません。

 

また、耐震等級に関する知識を持っていれば、住宅の購入に際して、その安全性や住みやすさを考慮したうえで、耐震等級を決定することができます。ある程度予算をかけて耐震等級を上げるか、住みやすさを重視して耐震等級に目をつぶるのか、地盤の強さなどから耐震等級を決定するのか……さまざまな選択肢が用意できるのも、しっかり知識を持っているからこそでしょう。

 

耐震等級によって地震保険の保険料が割引されることもありますので、それらも考慮に入れたうえで、施主としての要望をハウスメーカーや工務店に伝えていきましょう。性能表示制度・長期優良住宅制度の評価項目の一つに「耐震等級」という項目があり、これらの精度を利用しないと割引が受けられないことがあります。

 

自分が納得できる家づくり・家選びのために

耐震等級についての知識を持つことは、自分が納得できる家づくり・家選びを行うために大切なことです。家族とどのような毎日を送りたいのか、どのような将来像を思い描いているのかを、ご家族とともにじっくりと考えてみてください。大切な家族と過ごす住まいだからこそ、その安全性は、重要な基準になります。

 

建売住宅の場合は、性能評価書が交付されている住宅もありますが、交付されていない住宅もあります。注文住宅の場合は、耐震等級についてしっかり注文を出すことで、より住みやすく、より安心できる住まいを作り上げることが可能です。家族の安心・安全のために、この記事を役立ててください。

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