イベント・トピックス

平成28年熊本地震における現地被害調査結果について
地盤技術研究所による液状化等の地盤被害調査結果、ならびに対策についての提案を公表

news

戸建住宅の地盤調査・建物検査を手掛けるジャパンホームシールド株式会社(所在地:東京都墨田区、代表取締役社長:斉藤 武司、以下JHS)は、2016年4月14日より相次いで発生した一連の熊本地震における被害状況の現地調査を行い、調査結果を取りまとめましたので、ご報告させていただきます。
また本レターでは、これから住宅を新築する方に向けた提案もあわせて行っております。

被害状況の概要および提案は下記の通りです。JHS では、今後さらに詳細な調査を進めていきます。

調査の概要について

  • 調査期間:2016年5月9日~15日
  • 調査方法:JHS 地盤技術研究所 研究員4名による目視調査
  • 調査エリア:熊本市、上益城郡益城町、八代市、阿蘇郡南阿蘇村、阿蘇郡西原村、菊池郡菊陽町

調査結果について

  • 地震による地盤被害の中から、今回の地震で特徴的だった「液状化被害」「崖地の崩壊による被害」「断層変位による被害」の3点について、下記の通りまとめました。

1.液状化被害について

【被害状況】

今回の地震における液状化被害は、東日本大震災の際に沿岸部で見られた面的な被害ではなく、筋状もしくは局所的に被害が発生しています。特に、自然地形では堤防や砂州、人工地形では堀田や河川を造成した地点における被害が顕著に見られました。人工地形は地震によって元の地形に戻る傾向があると言われており、今回の被害でもその傾向が見られました。

地震で被害を受けた道路の様子。片側車線が補修されている。
地震で被害を受けた道路の様子。片側車線が補修され凹凸が出来ている。

【JHS からの提案】

一般的に公開されている液状化マップの多くは面的に作成されているため、概略を掴むには有効ですが、それだけで液状化の可能性を判断するのは危険と言えます。旧版地形図や過去の航空写真など様々な資料と照らし合わせ総合的に判断することが重要になります。最終的には宅地ごとに液状化調査を行うことを推奨します。また今回被害が多く見られた堀田や旧河川は、熊本県特有の地形ではなく、関東をはじめ全国各地にあり、造成時には地盤リスクを考慮する必要があります。

2.崖地の崩壊による被害について

【被害状況】

崖地の多いエリアでは、崖頂線(崖の肩部分)の崩壊により、家屋の新旧関係なく被害を受けている様子が見られました。被災地の地盤は関東地方などと同じ風化火山灰質で、表面の浸食さえ防げば平常時は比較的安定した地盤です。そのため、土圧に対し抵抗力が小さい練積み擁壁(間知ブロックを積み上げた擁壁)が設置されているケースが多く見られます。しかし、練積み擁壁は地震の揺れには弱く、地盤とともにブロックごと崩壊している箇所が多く見られました。

地震で被害を受けた崖の様子。
地震で被害を受けた崖の様子。崖とブロックが崩壊し、崖の上の家屋が崩れている。

【JHS からの提案】

上記のとおり、練積み擁壁は地震動には弱く崩壊しやすい危険性があります。家屋はなるべく崖から離して建てるのが理想的です。岩盤でない崖地において、崖に接近して家屋を建築する場合、地盤の良し悪しに関わらず杭を打設して地盤を補強することが望ましいと言えます。

3.断層変位による被害について

【被害状況】

地表面の変位は、地盤の弱線を狙って生じるため、どこに出るか予測するのは非常に難しいと言われており、今回の地震においても活断層マップにおける地図上の活断層線と地表の亀裂(地表面断層)は必ずしも一致せず、実際には活断層の線が引かれていない場所にも亀裂は生じている様子が見られました。また、活断層の変位した方向(東西方向)に沿って家屋が倒壊しているケースが多く見られました。

地震により道路から水田に亀裂が生じた様子
地震により水田に亀裂が生じた様子

【JHS からの提案】

上記のとおり、活断層の動きは予測することが難しく、近くに活断層がある場合、強い揺れが来ることを想定して耐震性の高い設計にするなどの対策をしておいた方が良いと言えます。まずは、近くにどんな活断層があるか予め知っておくことが重要です。