土砂災害に関する訴訟が増加。一つでも多くの土地情報の提供を。
文=秋野卓生(あきの たくお)弁護士
土地の冠水履歴や液状化ハザードマップ上、過去に液状化した可能性が高い土地や、土砂災害警戒区域に近接する土地など、土地の性状に関するトラブルの法律相談を多く受けております。最近の判例では、将来、土砂災害警戒区域に指定される可能性があることについて説明をしなかったということで、仲介業者の調査・説明義務違反を認定した判例があります。
札幌地裁平成26年9月12日判決は、売上げ仲介業者に対し、宅地建物取引業法35条1項14号、同法施行規則16条の4の3第2号が直接定めているもの(宅地が土砂災害警戒区域内にあるか否か)にとどまらず、将来指定される可能性があることについても説明義務があるとして仲介業者の調査・説明義務違反を認めた事例です。
説明義務というのは、知らないことまで説明する義務を負うものではありませんが、近時、説明義務違反のクレームが多様化している状況の中、土地売買に際しては、できるだけ詳細な説明を実施することでトラブルリスクを回避することをお勧めします。
しかし、住宅・建築・設計・不動産の業界にいる各企業で働く皆さまは、「何から何まで調べきることはできない」「調査している時間がない」という悩みを抱えることでしょう。
私が法律顧問弁護士を務めるジャパンホームシールドでは、豊富な地盤調査・解析実績により蓄積された地盤情報を閲覧できる地盤サポートマップのアプリ版を公開し、忙しい住宅・建築・設計・不動産業界の皆さまをサポートしており、高く評価できる取り組みであろうと思います。
必要最低限以上は、「聞かず、知らざる、調べない」という不動産業界の悪しき慣習は、消費者保護の判例の蓄積と情報開示を求める宅建業法改正の流れにより大きく変革していく事が予想されます。
消費者に対して、一つでも多くの土地に関する情報を提供しよう!というプロとしての専門家責任を果たす取り組みが、今後とも重要性を増してくるのではないか、と考えています。
弁護士法人匠総合法律事務所代表社員弁護士として、住宅・建築・土木・設計・不動産に関する紛争処理に多く関与している。2017年度より、慶應義塾大学法科大学院教員に就任(担当科目:法曹倫理)。管理建築士講習テキストの建築士法・その他関係法令に関する科目等の執筆をするなど、多くの執筆・著書がある。
JHS LIBRARY 編集部
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