2019.01.01ジオパーク紀行

とかち鹿追ジオパーク「-30℃しばれ世界」

十勝平野の北西部にある鹿追町全域をエリアとする「とかち鹿追ジオパーク」。

 

このエリアでは、約100万~1万年前に繰り返された然別の火山活動と「しばれ」※と呼ばれる「寒冷な気候」が作り出した独特の地形や生態系を見ることができます。

 

※「しばれ」とは、厳しい寒さを意味する北海道・東北の方言です。

 

今回はとかち鹿追ジオパークの大西潤さんに、鹿追町の魅力をご案内いただきました。

 

風穴の森に生きるエゾナキウサギ

鹿追町北部の山々には、かつての火山活動で誕生した溶岩ドームが崩れ、岩がゴロゴロ積み重っている場所(ガレ場)があります。

 

周囲一帯は、冷たい風が吹き出る風穴地帯となっていて、1万年以上前の氷期にシベリア大陸からやってきたといわれる「エゾナキウサギ」が生息しています。

 

 

冷たい場所を好むエゾナキウサギにとって、風穴の森は、住処として最適な環境なのです。

 

風穴から冷たい風が吹く理由は、下の図1のような仕組みになっているからです。

 

岩が積み重なる斜面の内部では、空気の対流が起きています。地下で冷やされた重たい空気は斜面の下へ移動し、下部の穴から吹き出すのです。

 

エゾナキウサギに会いに

市街地から然別湖方面へ道道85号線を車で進むと、標高850m程のところに然別風穴地帯への入口があります。

 

そこから10分程歩くと、辺りの植生が一気に変わり、追力の岩塊斜面が現れます。「ピチッピチッ」と鳥のさえずりのような声が聞こえたら、エゾナキウサギが近くにいる証です。

 

この日、息を潜めていると、まもなくして風穴から手の平サイズのエゾナキウサギが飛び出てきました。

 

撮影されるのを待っているかのように岩の上でひと休みをしては、風穴から風穴へ忙しなく走り回っています。

 

帰り道では、私たちを送り出すかのように何度も現れ、その愛らしさに足を止めずにいられませんでした。

 

鹿追の大地ってどうやってできたの?

次に、この鹿追の大地の成り立ちについてご紹介します。

 

1.十勝平野は昔、浅い海や湿地だったって本当?

鹿追の大地がある十勝平野の成り立ちを知るために、100万年前まで遡ってみましょう。

 

約100万年前

約100万年前、十勝三股で大きな火山の噴火が起き、十勝に大量の火砕流が流れ込みました。

 

火砕流は十勝平野にまんべんなく積もらせると、ビルの3階まで到達するほどの量だったそうです。

 

約80万年前

鹿追町の南半分が湿原になりました。

火山灰や山からの土砂により徐々に平野が形成されていきました。

 

約30万年前

 

今の然別湖の周辺で火山活動が繰り返されました。

ナイタイ山、ペトウル山が誕生しました。

 

約6万年前~

 

再び火山活動が活発に(約1万年前まで)なりました。

この頃、東ヌプカウシヌプリや白雲山、然別湖ができました。

 

 

然別湖は、周囲の火山の噴火により然別川がせき止められてできました。このような湖は「堰止湖(せきとめこ)」と呼ばれます。

 

然別湖は標高804mと道内で最も高い所にあり、冬季は結氷します。深い所では、約100メートルに及ぶ場所もあるそうです。

 

 

3.岩塊(ガンカイ)斜面って何?-別名ガレ場-

然別湖周辺の山々には、大きな岩がゴロゴロ積み重なる「岩塊斜面」を見ることができます。この岩は、粘り気の強い溶岩が冷えて固まるときに縮んで割れたり、凍結により砕かれたものです。

西ヌプカウシヌプリの岩塊斜面

 

岩塊斜面の地下は、2年以上にわたって凍り続けている「永久凍土」 があります。鹿追の永久凍土からは現在わかっている中で日本最古とされる約4千年前の氷が見つかっています。

 

 

4.然別湖(しかりべつこ)に浮かぶ「幻の村」とは?

12月には凍り始める然別湖。1月には全面凍結を迎え、2ケ月だけ湖の上に幻の村「しかりべつ湖コタン」が現れます。

 

真っ白な雪原に立ち並ぶイグルー。その中にはアイスカフェ、外には氷上露店風呂も。湖上から夜空を見上げれば、北斗七星やカシオペアなど星座を肉眼でとらえることができます。

 

5.体験したい!鹿追のアクティビティ!

真冬の北海道の空といえば、鉛色?

 

いいえ、十勝の冬の晴天率は全国トップレベルです!  冴えわたる冬の青空は「十勝晴れ」と呼ばれます。

 

美しい景観や温泉、登山を楽しみに毎年80万人を超える観光客が訪れる鹿追町では、ネイチャーガイドによる自然案内はもちろん、熱気球フライト、ナイトウォッチングなど、鹿追ならではのアクティビティができるそうです。

 

 

ぜひ鹿追にお越しください!

とても仲睦まじく、温かくて面白いとかち鹿追ジオパークの皆さんが迎えてくれます。

左から、黒井敦志さん、三反埼順也さん、大西潤さん

 

ビジターセンターでは様々な道具を用いて、地形のなりたちを楽しく学べますよ!

▶とかち鹿追ジオパークのWEBサイトはこちら

 

アイヌ語で読み解く鹿追の地形

さいごに、鹿追の地形の「アイヌ語」を紹介します。

 

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JHS LIBRARY 編集部

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