2022.11.16TEAM JHS

安全性と経済性の両立を実現する新しい鋼管工法SQ Pile(エスキューパイル)

内山(中)がSQ Pileの発案・企画・開発を、武智(右)が開発・建築技術性能証明の取得を、岡田(左)が各部材の製造・流通を担当した

 

ジャパンホームシールド(JHS)は、 安全性と経済性をとことん追求した新発想の地盤補強工法 「SQ Pile (エスキューパイル)」 を独自開発、 2022年4月から提供を始めました。「鋼管工法のコストをなんとか抑えられないか?」 との思いから、 2年の歳月をかけて製品化にこぎつけました。 SQ Pile開発に携わった内山雅紀さん、 岡田宗治さん、 武智耕太郎さんの3人に話を聞きました。

 

取材・文 = 金井友子(新建ハウジング)

 

 

SQ Pileとは

技術統括部 副統括部長(兼 地盤技術研究所 所長) 内山雅紀
2006年JHS入社、技術部配属。2012年より地盤解析部、現在に至る。1級土木施工管理技士、地盤品質判定士。公私ともに問題解決が大好きで、特に壊れたものの修理は大好物。壊れたものを見つけると喜んで分解しています。

内山:今回開発したSQ Pileは鋼管を地中に埋め込んで住宅を支える杭状地盤補強工法(以下:鋼管工法)の1つです。

 

大きな特徴は、地盤補強をし てもなお発生してしまう不同沈下の原因となる「ネガティブフリクション」対策に特化しながら、安全性と経済性を両立させたこと。

 

これを実現するために、軸材・先端ともに非常に特殊な形状(図 1)になっています。

角型鋼管

(図1)角型鋼管で先端は平板形状の SQ Pile

 

 

開発のきっかけは?

内山:杭状地盤補強の開発では、一般的に杭体の「摩擦力」をいかに多く見込める仕様にするかが勝負となります。

しかし、摩擦力は通常、上に向かって抗体を支えるプラスの力として働きますが、現場によってはそれが下に引き込むマイナスの力に逆転するネガティブフリクションという現象があり、それが不同沈下の原因となるケースがしばしばあります(図2 )。

 

戸建て住宅の場合、予算の関係で大規模建築にするような地盤調査が行われないため、ネガティブフリクションの発生を予見できないケースがあるのです。

一方、当社では、以前からネガティブフリクションを簡易的に見抜く地盤解析を行っているため、 そうした現場には摩擦力が小さく先端支持力が大きい鋼管工法をご提案することで沈下事故を減らす努力をしてきました。

 

ただ、 鋼管工法は最も品質が高い代わりに地盤補強工法の中でも一番コストがかかる部類であるため、 お客様から 「もう少し安い方法はない?」 というご相談が度々あり、 そのニーズに応えたいという思いが今回の開発の端緒になりました。

 

 

 

「逆転の発想」から生まれたユニークな平板形状

―なぜ特殊な形状に?

SQPile

安全性と経済性を両立する新地盤補強工法「SQ Pile®」を2022年4月1日に提供開始。一般財団法人日本建築総合試験所による建築技術性能証明を取得。(写真は施工イメージ)

内山:一般的な鋼管工法は円筒の先端に大きな円盤のような羽根がついたらせん形状が多いのですが、SQ Pileは軸材も先端も角型、しかも先端はコンパクトな平板形状です(図2)。

 

何も奇をてらったわけではなく、先ほど話したような地盤の「摩擦力」を減らしたい、「先端支持力」は大きくしたい、と考えるうちにこの形に至りました。

 

一般的な鋼管工法は、掘削しやすい反面、硬い地盤面に到着した際の先端支持力は小さめになるため、先端の羽根を大きくして支持力を確保する必要があります。

 

これに対し、平板な先端でがっちりと定着させれば高い支持力が発揮でき羽根も小さくできるはずだ、と。

また摩擦に関しては従来の円筒型を四角柱型にすることで、 あえて周囲の地盤を乱し、 ネガティブフリクションを減らせるのではないかと。

従来工法とは真逆の発想であるがゆえに、 社内から 「無理だ」 「できない」 と言われましたが、 私には勝算がありました。

 

武智:最初にアイデアを聞いた時は、私たち開発チームも「掘削しにくい角型形状では難しいのではないか?」と思いました。

けれども実験してみると実現可能な工法だとわかり、すぐに「やってみよう」と気持ちを切り替えることができたのです。

 

―開発で苦労したことは?

地盤技術研究所 係長 武智耕太郎
2011年、JHSに新卒入社。地盤解析部に2年在籍し、2013年より現職。地盤品質判定士。東海大学工学部建築学科非常勤講師。趣味はサッカー観戦。週末は好きなチームの応援に繰り出しています

武智:「施工性」と「支持力」は相反する関係にあるため、それをいかに両立させるか、ギリギリのバランスを狙うのに苦労しました。

内山:ここで言う施工性とは「掘削速度」 のこと。そもそも「値ごろ感のある鋼管工法を開発したい」という思いが出発点にあるため、コスト増の要因となる施工日数の増大はどうしても避けなければなりませんでした。

 

武智:掘削速度を落とさないためには、土をうまく逃がしなら回転貫入するしかけが必要です。そこで、先端翼を円形ではなく正方形にし、「掘削補助爪」の形状や角度を工夫し、約10パターンの試験体を用意して全国のさまざまな現場で施工実験を 行いました。

 

良かったところは次に生かし、悪かったところは改善する、本当に地道な作業を繰り返した結果、いまの形にたどり着きました。

 

また、本格的な鋼管工法の自社開発は今回が初めてだったため、開発にまつわる試行錯誤はもちろん、実験現場の選定や段取り、建築技術性能証明を取得するための解析や強度計算、課題提出など、どれもハードな作業の連続でした。

そんななか、FC店や協力工事会社、大学の協力はとてもありがたかったです。

 

 

コンパクトかつシンプルを徹底しコストダウン

内山:軸材には既製品のいわゆる鋼管を使うため、他の鋼管工法と差別化できる先端翼をいかに小さくシンプルにして製造コストを抑えるかにこだわりました。

効率よく先端支持力を発揮する形状のため、 先端の直径を一般的な鋼管工法の約半分の150㎜、面積を約4分の1にコンパクト化することにより、材料費の大幅なコストダウンに成功しています。

 

 

―製品化で苦労したのは?

岡田:「安全性と経済性の両立」を掲げている以上、品質を保ちながらいかに部材を安くつくるかが私に任された大きな課題でした。

為替や鉄鋼価格の高騰といっ た向かい風が迫るなか、コストを常に意識しながら材料の調達から施工に必要な部材の開発・改良、さらにそれを製造・運搬してくれる建材会社の開拓に取り組んできました。

鋼管をつなぐ継手に関しては特に、実際に溶接をする職人さんたちの声を聞き、作業性を高めるための改良を何度も重ねています。

 

 

SQ Pileの今後

 

岡田

営業戦略部 商品開発課 課長 岡田宗治
2006年9月入社。東北支店長を経て、2020年度より現職へ。SQ PileやCGパースなどの新商品開発・販促に携わる。休日はゆっくり映画を観て過ごします。

岡田:新しい工法の普及には「使いやすいこと」が第一ですが、 そこには「安い」という要素が不可欠です。

 

ですから、部材 1つのコストでもシビアにとらえ、生産体制を日々見直し、より手が届きやすい工法へと進化させたいと思っています。

 

また、各地の工事現場に立ち合うと、同じ材料、同じ工法を使っても、その地域の土質と工事会社の機械の扱い方によって掘り方に特徴があることに気付かされます。

 

そうした多様な掘り方への対応力を高め、最終的には工事会社に安全性や経済性を含めて「SQPileって使いやすいよ」と言ってもらえるような工法に育てたいですね。

 

 

内山:SQPileは、 フラットな平板形状なのに掘りやすいこと、施工性と支持力のバランスがいいこと、そして何よりも、高品質で安全な鋼管工法をお手頃価格で使えることが大きな強みです。

全国のJHS拠点に技術営業の専任スタッフが在籍しており、今回の工法をどういう現場でどう使うのか詳しくご説明しますのでお気軽にご相談ください。

SQ Pileの開発に携わったメンバー

 

▶ジャパンホームシールドのSQPileはこちら

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JHS LIBRARY 編集部

一人でも多くのお客様の安全・安心な住まいづくりを支えたいという想いから「JHS LIBRARY」をスタートしました。地盤から法律知識、住宅会社様のユニークな取り組みなど様々な情報をお届けします。

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