2018.01.01法律相談室

住宅業界リスク対策「情報開示と説明責任」

文=秋野卓生(あきの たくお)弁護士

平成29 11 27日(月)、一般社団法人日本木造住宅産業協会、一般社団法人住宅地盤リスク情報普及協会の主催で開催された「住宅業界リスク対策セミナー」において、「住宅事業の経営リスクに備える」と題したパネルディスカッションの司会を務めてまいりました。今回は、このパネルディスカッションについてご紹介させていただきます。

セミナー2パネリストとして、中藤栄顕氏(一般社団法人日本木造住宅産業協会・認定事業推進委員)、小尾英彰氏(一般社団法人日本木造住宅産業協会・認定事業推進委員)、高田徹氏(NPO法人住宅地盤品質協会・調査WGリーダー)、末政直晃氏(東京都市大学工学部都市工学科・教授)、荒井富美雄氏(レジリエンスジャパン推進協議会・普及促進本部長)にご参加いただきました。

 

まだ不十分、住宅業界のリスク説明

熊本地震を経て問題ないとされた建築基準法令の現行基準とユーザーの耐震性の認識のギャップについて、中藤氏からは「建築基準法は最低限守るべきこととして巨大地震が起きても圧死しない、つまり倒壊してしまわないことを要求している。建物が壊れないということではない。しかし、ユーザーは法律を守って家を建てるということは、当然、地震で壊れることはないと解釈し、特に大きな地震があっても住めなくなるような損傷が発生するとはほとんどの人が思ってない」という問題提起がありました。

液状化対策については、末政氏は「100年に1度というが、調べてみるとやはりもっと頻度は多い。震度5弱程度で液状化が起きることもあるので正しく把握する事が説明責任ではないか。液状化をハザードマップでなくピンポイントで調べる事は大切なこと。土木では調査しているし、住宅も調査はすべき」と指摘しました。また、小尾氏からは、実際に震災の現場・被災地を見た立場から「液状化した住宅としない住宅があった時、『なぜうちが被害を受けたのか・・・』という気持ちになるのは良く理解できる」という話があり、こういった意見の中で中藤氏は、「説明しようにも説明できないということもある。対策になると余計な費用がかかるというのもお客様には伝えづらい。このようなリスク説明は十分とは思っていない」と住宅業界の現状を述べました。

 

情報開示し、説明責任を果たす

このシンポジウムを通じて、消費者が自ら望む住宅を取得するに際して、「自己判断」を実施するのに最低限必要な情報を提供することが改めて重要であると考えました。

「リスクばかり説明していたら、せっかく、請負契約を締結しようと心弾ませているお客さんのやる気が失せてしまう」という見解も、特に住宅会社の営業サイドから聞くことがあります。しかし、それはもう、ネット社会が到来する以前、情報がクローズであった20年以上前の住宅営業の考え方であり、今は、いかに誠実に正直に利他の精神でお客様のためを想い、家づくりをするか、というポリシー、姿勢が特に求められている時代であると思います。

2018年は、企業としての姿勢や取り組みについて、情報開示の姿勢を取っていただき、やがて到来する厳しい時代でも「真に生き残る住宅会社」として社会・顧客に支えてもらう礎を築く年にしましょう。

企業が事業活動を通じて環境・社会・経済に与える影響を考慮し、長期的な企業戦略を立てていく取組み(コーポレート・サステナビリティ)が、今、一番大事な戦略となります。一人ひとりの顧客にリスクを伝え、説明責任を果たしていく事が肝要です。

秋野弁護士

秋野卓生(あきの たくお)弁護士

弁護士法人匠総合法律事務所代表社員弁護士として、住宅・建築・土木・設計・不動産に関する紛争処理に多く関与している。2017年度より、慶應義塾大学法科大学院教員に就任(担当科目:法曹倫理)。管理建築士講習テキストの建築士法・その他関係法令に関する科目等の執筆をするなど、多くの執筆・著書がある。

 

 

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JHS LIBRARY 編集部

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