建物状況調査では「契約書」を作成する!
文=秋野卓生(あきの たくお)弁護士
この4月より、改正宅建業法の全面施行がスタートしました。
宅建業法の中で、建物状況調査(インスペクション)について、説明をしなければならないと義務づける効果は非常に大きい(説明しなければ宅建業者は処分されるリスクを負う)と考えます。
中古住宅を取得し、リフォームを希望する買主と巡り会うチャンスですから、リフォーム業者の多くは、建物状況調査に取り組むことになるでしょう。
この建物状況調査を実施するにあたっては、必ず「契約書」を作成しましょう。
ただ、公表されている建物状況調査の契約書書式は、沢山の約款が掲載されており、「こんなに大げさな契約書を交わさなければ建物状況調査が実施できないのか?」と辟易しているリフォーム業者も少なくないと思います。
今回は、最低限、建物状況調査の契約書に書くべき事項について解説したいと思います。
1 国土交通省告示第八十二号
建物状況調査契約書を作成するにあたり、国土交通省告示第八十二号第3条、第4条の規程を確認しておきましょう。※詳細はこちらをご参照ください。http://www.mlit.go.jp/common/001180499.pdf
特に、第4条6項各号所定の事項は、依頼者(施主)への報告義務の内容であり、契約書の中に盛り込んでおきたい事項です。
逆に、それ以外の項目は、契約書記載を強制されているわけではありません。弊社でも最低限、契約書に記載すべき事項だけの契約書を作成しているので、お気軽にご相談ください。
2 A4 1枚の契約書で対応可能
国土交通省告示第八十二号の観点からいうと、第1条から4条までが規定されていればOKです。
しかし、電気の使用許諾など、施主の協力を求める条項(第5条)は、入れておきたい条項です。
また、第6条(調査結果の扱い)として、(1)本件住宅の瑕疵の有無の判定はしないこと(2)本件住宅に瑕疵がないことの保証はしないこと(3)報告書の記載内容について、調査完了時点からの時間経過による変化または経年劣化がないことの保証はしないこと(4)建築基準関係法令等への適合性の判定をするものではないことは、リフォーム業者を守るための条項として規定しておいた方が良いと考えます。
3 契約書を作成し、処分リスクを回避する
建築士法に基づく処分リスクに加え、講習実施機関による処分リスクもあり、仮に建築士が処分を受けると当該処分の事実が公表されるわけですから、Google等検索エンジンで当該建築士の氏名を検索すると、処分を受けた事実がヒットする可能性があります。
契約書を交わさずに、処分を受けてしまうのは、ばかばかしいので、実際に業務を受託する前に契約書整備の視点を忘れずにお願いしたいと思います。
弁護士法人匠総合法律事務所代表社員弁護士として、住宅・建築・土木・設計・不動産に関する紛争処理に多く関与している。2017年度より、慶應義塾大学法科大学院教員に就任(担当科目:法曹倫理)。管理建築士講習テキストの建築士法・その他関係法令に関する科目等の執筆をするなど、多くの執筆・著書がある。
JHS LIBRARY 編集部
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