自社で一から大工を育てる/会津建設
社員72人中、29人が大工という会津建設さん。毎年、若者を社員として採用して育てており、全国的にも大工育成のモデル工務店として注目を集めています。なぜ社員大工にこだわるのか、その理由と大工育成の裏側をお聞きしました。
取材・文 = 荒井隆大(新建ハウジング)
手刻みのできる大工が腕を振るう
同社のキーワードは「人と木」。家づくりを担う大工(職人)と、素材である木材、「両方が揃わないと、良い家はできない」と話すのは、芳賀一夫社長です。
少子高齢化によって、年々大工不足が深刻化しています。同社でさえ、その流れからは逃れられません。このままでは、大工がいなくなるのは目に見えている―芳賀社長は7年前から再び大工育成に取り組むことを決意しました。
近年、木造住宅も工業化や合理化が進み、熟練した職人がいなくとも家を建てることは可能になっています。しかし「構造を理解しているのが本当の大工です」(芳賀社長)。同社の大工は全員、手刻みで構造材を加工できる腕利きばかり。社内には木材の加工設備も備え、大工が墨付けして構造材を加工しています。

同社には手刻みで構造材を加工できる腕利きの大工ばかり
コンスタントに新卒で大工を採用
毎年、3人前後を新卒採用し、社内研修を経て、1年目からベテラン大工の指導のもと、現場で経験を積ませていきます。2021年も、4月に5人が大工として入社しました。
採用には、地元の工業高校などを訪問して生徒に大工の仕事を説明したり、教員とのコミュニケーションを深める「種まき」が欠かせません。社会保障は当然で、年数や経験に応じて昇給していく給与テーブルや、雇用体系も整備しました。
そして、何よりも重要なのは親方との人間関係。「人間的な面をケアしてあげないと、長続きしない。入社から1年は親方とマッチングする期間と捉え、どの親方につけるかを見極めます」(芳賀社長)。不満があれば、社長に直談判することもできるそうです。
指導に時間を取られてばかりだと教える側も不満を感じますし、企業としても利益は必要です。そもそも「現場はひとりでは進まない」ので、「ベテランが若手を教え、中堅が仕事をする」状況をつくり出すためにも、人間関係への配慮は欠かせないのです。

入社1年目の大工は、まず社内で大工技能を学び、徐々に現場へ出て経験を積む
若手に仕事を任せるプロジェクト
2020年、大工育成の取り組みの一環として、新たなプロジェクトを実施しました。経験5年未満の若手大工だけで、お客様の住宅を施工したのです。構造材の墨付けから上棟、内装の仕上げまで若手大工だけで行い、1棟を完成させました。ベテラン大工2人がついてはいましたが、手は出さず、必要に応じて指示を出すだけでした。
経験の浅い若手だけに任せて大丈夫なのか、不安に思う方もいるかもしれません。しかし芳賀社長は、「経験を積ませ、何が成功で何が失敗につながるかを刻ませる」のが、このプロジェクトの目的だと言います。

「大工は経験を積ませないと育たない」と、若いうちから仕事をさせることの重要性を説く芳賀社長
また、若手とは言っても4~5年も経てば、それなりに仕事ができるようになります。成長の度合いを確かめたり、後輩に大工として働く姿を見せる場としても、現場は重要なのです。

若手大工が完成させた、ブルーグレーを基調としたアーリーアメリカンスタイルの外観
自社の調査結果を補強する地盤解析・保証
同社とジャパンホームシールド(JHS)の付き合いは2008年から。住宅瑕疵担保履行法の施行を翌年に控え、供託では金銭的な負担が大きいため、JHSの瑕疵保証を利用するようになったのがきっかけでした。担当の佐藤将康常務は「担当者の人柄が気に入ったので、JHSを選びました」と当時を振り返ります。
芳賀社長は大学で建築と土木を学んだ経験を生かして、地盤調査を内製化し、JHSがパートナーとして解析結果の評価と品質保証を担っています。福島県内の住宅会社としては、全棟の地盤品質保証を導入したのはかなり早い例で、導入以降、事故案件も皆無。佐藤常務いわく「お客様に、より高いレベルの安全・安心を提供できるのはJHSさんのおかげです」と話します。
同社とJHSの関係が深まったのは、東日本大震災の発生後、同社が災害復興公営住宅に関わることになったときでした。わずか2~3日で何棟もの地盤判定の結果を提出しなければならないというタイトなスケジュールで、地盤解析も必須でした。
佐藤常務も多忙を極める中で「明日までに結果が欲しい」など、かなり厳しい要求をしたと言います。しかし、要望通りの日程で解析結果が届き、1件も遅れることなく県に結果を届けることができました。「どう考えても無茶ぶりだったが、JHSさんはしっかり対応してくれました。とてもありがたかったし、強いパワーを感じました」(佐藤常務)。
JHSにとっても大変な経験だったに違いありませんが、その後も同社の新年会に足を運んでくれるなど、むしろ交流は深まったよう。最近では、コロナ禍で集まったりするのが難しい状況も続いていますが、佐藤常務は「ぜひ弊社の社員みんなとふれ合ってほしい」と、まるで社員の一員であるかのように捉えています。

「人と木」をキーワードに家づくりを担う大工(職人)と素材である木材
にこだわる同社。右上から時計回りに会津建設 芳賀社長、佐藤常務、JHS東北支店の石川支店長、志賀エリアマネージャー
「職人がつくる」を大切に
若者を育てることには、多数の困難が伴います。採用や福利厚生は欠かせないとはいえ、それなりのコストがかかり、受注がなければそのコストを捻出できず、そもそも若手が育つ場や機会もなくなってしまいます。
芳賀社長は「若者を雇用し、仕事をさせ、利益を上げるまでが仕事」だと考えています。「『職人がつくる家』をしっかり実践する」を基本に、大工育成とビジネスの両立を図っていきます。

福島市内のモデルハウス。モダンな外観だが、中には大工の腕を 発揮した和室や格子のデザインをあしらった

JHS LIBRARY 編集部

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