躯体にこだわり部材製作を内製化。基礎の自社施工にも手応え/基信
「With sincerity one by one( =ひとつひとつ真心をこめて)」を経営理念に掲げ、2×4工法、屋根トラス、床トラスを組み合わせた高耐震の木造技術を磨いてきた基信さん。躯体へのこだわりが高じて昨年、基礎の自社施工にも乗り出し、手応えを感じているという髙橋敏也社長に話をうかがいました。
取材・文 = 金井友子(新建ハウジング)
2×4工法との出会い
子どもの頃から大工職人に憧れていたという髙橋社長は、1990年に同社の前身となる外壁工事会社を創業。
その6年後、大きな転機が訪れます。付き合いのある工務店と出かけたカナダ視察で、2×4工法と出会いました。
2×4工法のシンプルでムダのない施工方法と、六面体で地震の揺れを受け止める耐震性の高さに衝撃を受け、「これからの日本で必ず必要とされる建築工法だ」と直感。「どうしても自社でやってみたいという気持ちを抑えられなかった」と当時を振り返ります。
こうして、帰国してすぐに外壁工事と並行するかたちで2×4工法の新築事業に参入。そのタイミングで社名を「基信」に改めました。
設計の自由度上げる「床トラス」
同社が10年ほど前から取り組んできたのは、2×4工法の躯体に屋根トラスを組み合わせた家づくり。
屋根トラスは、三角形で構成された骨組で小屋組をつくることで各部材にかかる荷重を分散し、スパン20m以上の柱のない大空間を木造で実現する方法です。北米ではごく当たり前に普及していますが、残念ながら当時、国内の住宅では大空間に対するニーズがそこまで高くなかったため、なかなか採用に至らなかったといいます。
そんななか髙橋社長は、「2階の床にトラスを使えるようにしたらおもしろいんじゃないか?」と着想。3年の歳月をかけて梁にトラスを組み込む研究を重ね、木造の「床トラス」を独自開発しました。
従来の屋根トラスでは、2階は大空間を実現できても1階は約4mスパンが限界でしたが、新しい床トラスでは、1階も間仕切りなしの大空間が可能に。
1・2階とも設計の自由度が格段に上がるため、ライフスタイルや家族構成の変化に応じたリフォームが容易で、建物寿命が延びるため資産価値の維持・向上にもつながります。
しかも、屋根・床トラスとも2×4工法と同様、工場製作したものを搬入するため、現場での加工が要らず工期短縮になる、廃材が出ないなど施工面でのメリットも大きいのです。
オートプレカット機導入。国産材2×4も視野に
さらなる成長のターニングポイントとなったのが2017年。この年、岐阜県内に2×4とトラスの部材を自社製作できるプレカット工場を建設し、豪・マイテック社の構造計算ソフトとオートプレカット機を導入しました。
これを機に、自社が手がける60棟あまりの注文住宅全棟で構造計算+床トラスを標準化すると宣言。構造計算の内製化を進めた成果は大きく、「根拠と自信をもって建物の強度を示せるようになった」といいます。
また、社外向けの躯体供給体制を強化し、主要取引先である大東建託に1300坪分、地元ビルダーに500坪分(自社物件含む)を出荷できるまでになりました。
オートプレカット機の導入や構造計算の内製化には、「国産材で2×4工法を実現したい」という髙橋社長の次の夢も込められています。
「2×4工法では2階床に幅235㎜の2×10材が必要ですが、国産の大径材を確保するのは至難の技。けれども、床トラスなら国産の2×4材で十分対応できるはず」。実現する日は近そうです。
少人工・短工期な基礎工法にも着手
「いいことは何でも採用する」という同社は、昨年から基礎の内製化にも着手。ジャパンホームシールド(JHS)が提案する新しい基礎工法「アイランドベース」を東海エリアで初めて導入しました。
建築業に参入してからずっと躯体にこだわり、「基礎も躯体の一部」と考えて来た髙橋社長にとって、基礎の自社施工は悲願でもあったといいます。
新工法は、基礎の立ち上がり部分を工場でプレキャスト化し、現地で組み立てるというもの。通常の基礎に比べると、内部の立ち上がりも最少限になるため、床下環境が改善され、点検作業が容易になるなどのメリットもあります。
「アイランドベースでまず感じたのは、2×4工法の考え方とよく似たシンプルでムダのない工法だということ。私が長年求めていた基礎工法そのものだと感じ、出会えたことが何よりもうれしかった」と話します。
導入後の大きな変化は、工期と人工です。従来2週間かかっていた基礎工事が天候に左右されることなく7日程度で終わるため、ほぼ当初の工程表通りに工事を進められるようになったそう。しかも、徐々に少ない人工でできるコツがつかめてきたため、いまは「6日以内」を目指して奮闘中だといいます。
髙橋社長が特に評価するのは「熟練の職人でなくても誰もが安定して高精度で施工できるところ」。同社では、同じ職人が基礎と躯体の両方の工事にあたっていますが、問題はまったくないうえ、何よりも職人不足が深刻化するいまの時代に最も合う工法として手応えを感じているそう。今後は、外国人実習生を訓練して、彼らに基礎工事を担ってもらい、他社に供給する計画も進めています。
また、JHSが土地情報を加味したうえで、1棟ごとに計算をして根拠のある基礎設計を行うため、現場監督からは「躯体と同様、基礎の強度についても自信をもってお客様に説明できるようになった」と良さを実感する声が挙がっています。
非住宅木造が好調。目指すは「強い会社」
昨年度の新築住宅の完工棟数は62棟。営業専任者をあえて置かず、この30年間、髙橋社長が各所で築いてきた人脈からこれだけの紹介受注が発生しているというのだから驚きです。
また近年は、床トラスの開発により、いままで鉄骨にしかできなかった開放的な空間が木造でできるとあって、非住宅木造が伸びており、その市場性の高さも実感しているといいます。
「私たちが目指しているのは、世の中から必要とされる『強い会社』になること。お客様には満足度の高い建物を真心込めて丁寧につくり、同業者でもあるビルダー様には当社の高精度な基礎と躯体を使っていただくことでお役立ちしたい。規模の大小、業界の垣根を超えて相談され、一緒にビジネスをしたいと思ってもらえる会社でありたいと思います」。
JHS LIBRARY 編集部
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