2021.03.24住宅会社リポート

地域愛着経営。お客様と地元のために挑戦し続ける/大英産業

変化をおそれることなく挑戦し、前に進み続けることで、300 億円企業へと成長を遂げた大英産業さん(福岡県北九州市)。その根底には、あふれるほどのお客様愛と地域愛がありました。

取材・文 = 金井友子(新建ハウジング)

 

13年前、初の赤字を経験

今年で創業53年目を迎える同社の歴史は、宅地造成事業から始まりました。順調に成長を遂げ、18年目の1986年に新築分譲マンション「サンパーク」の供給をスタートすると、これが経営の柱に。2000年以降は多角化を進め、中古住宅の買取再販やリフォームにも力を入れるようになりました。

 

大きな転機は2008年のリーマンショック。銀行の融資が止まり、土地の仕入れができなくなった同社はその翌年、創業以来初の赤字を経験します。

 

けれども、社内には暗さや諦めのムードはまったくなく、部署・役職の垣根を超えて白熱した議論を重ねながらすぐに行動を起こしました。社員、家族、取引先、お客様のために会社を存続させなくてはという想いは全員同じでしたからと茅原取締役は振り返ります。

 

そうして出した答えは、まったく経験がなかった「分譲戸建住宅」への挑戦でした。

戸建事業本部 事業統括部 竹下部長(左)茅原取締役(右)

 

分譲戸建住宅。新たな価値の創造へ

2009年に同社が始めた分譲戸建事業「サンコート」は、当時としては市場にほとんどない価格帯の商品でした。当時の北九州エリアにおける注文戸建が土地込みで4000〜5000万円、分譲マンションが2000〜2500万円だった時代に、同社は「2000万円以下の分譲戸建」を打ち出したのです。

 

「家賃の支払いと同等もしくは分譲マンションの価格帯以下であれば必ずニーズがあると考えたのです」(茅原取締役)。それを可能にしたのが、分譲マンション事業で長年培った販売力と土地の仕入れルート、そして商品開発力でした。

 

いざ発売すると反響はすさまじく、その年に30棟、翌年には120棟、3年目には300棟を超え、瞬く間に北九州市でトップに。

 

竹下部長はこの成功要因について「2プランのみというわかりやすい商品構成に加え、限られた予算と期間の中で子どもの就学前にマイホームを手に入れたいという子育て世帯の真のニーズと当社の商品がうまくマッチングしたのだと思う」と分析します。

 

2000万円から新築戸建が買える―。

新しい常識・価値観をつくった同社のブランド認知は一気に進みました。

 

事業承継に向け「リブランディング」

成功の陰にはいつも、創業者であり現相談役の大園英彦さんの“判断力”と“推進力”があるといいます。とはいえ、いつまでも相談役の力に頼るわけにはいかないのも事実。従業員数300人超にまで成長した同社が次にやるべきは、「事業承継」と「持続可能な経営」の両立でした。

 

そこで、2015年頃から、茅原取締役をはじめとする若手役員が中心となって会社のリブランディングに着手。「元気な街、心豊かな暮らし」というコーポレートビジョンを新たに掲げました。

 

さらに事業承継に向けて、会社の新しい「基準」をつくるため、株式の上場にも挑戦。わずか2年の準備期間を経て、2018年に福岡証券取引所への株式上場を見事に果たしたのです。

 

 

 

お客様のそばにいたい

リブランディングの過程で、「地元・北九州のお客様の人生に寄り添い、その人たちが心から笑顔になれる貴重な仕事をさせてもらっている。それを再確認してからは、どんなときでもお客様と地元の活性化を第一に考え行動する会社であろうと決めました」と茅原取締役。

 

さらに、自分たちの存在価値も意識するようになったといいます。「家を売るだけの会社ではなく、『気づいたら暮らしのそばにいつも大英産業がいるよね』と感じてもらい、地域から愛され必要とされる存在であり続けること。それがお客様と地元、そして僕らの未来につながっていくと思うんです」。

 

また、自社を身近に感じてもらうための地道な活動も続けています。4000人規模のお客様感謝祭「キタキューマルシェ」に、北九州マラソンの公式スポンサー、清掃活動、スマホアプリを使った情報の発信・共有など、さまざまな場面でお客様との接点を持っています。

 

安心を届ける無償点検

お客様と地元を第一に考える視点は、新しい資材・サービスを導入する際にも大事にしています。ひたすら「お客様にとって何がベストか」で判断するのだそう。そんな同社とJHSとの取引が始まったのは2019年。定期点検サービスの導入でした。

 

「定期点検は、お客様の『安心』を守るだけでなく、お客様の声を直接聞き、住まいの状況を見せていただき、最後は『大英産業で本当に良かった。ありがとう』という言葉がいただける貴重な機会」と岩田主任。それだけにアフターフォローにはかなり力を入れており、1軒につき5回以上の定期点検を毎回無償で実施。約5人のカスタマー専任スタッフと一部外注を使いながら80%という高い点検実施率をキープしてきました。

 

「本来であれば私自身がすべての点検に行きたい」と話す岩田主任ですが、供給戸数が年400棟ともなるとさすがに難しく、月100件ほどの点検業務をJHSに任せることに。

 

「導入後1年が経過しましたが、社内スタッフと遜色のない丁寧で高品質な点検サービスのおかげでお客様からのクレームはゼロ。新しく点検員さんが入るたびにサービスレベルをロールプレイング形式で確認させてくれるなど、JHS さんには細やかな配慮があり、同じ目線を持ったベストパートナーだと思っています。これからも、私たちアフター部門とJHS さんで同じビジョンを持ち、お客様の満足につながる品質を追求していきます。」

購買積算 福士責任部長(左)、 コミュニケーション推進部 西山係長(中央)、すまいサポート事業部 岩田主任

 

地盤もお客様第一で

定期点検に続いて2020年7月に導入したのが、JHSの地盤サポートシステム。きっかけは、当時取引のあった地盤調査会社の判定結果に疑問を感じたからでした。

 

「お客様が安心できる暮らしのためにも、過剰な工事でお客様に不利益を被らせないためにも、地盤判定の正確性はどうしても譲れないポイントだった」と福士専任部長。

 

最終的に「地盤サポートシステム」を導入したのは、判定方法やコストについて納得がいくまで説明してくれたこと、思いつく限りの課題や疑問にすべて解決策を示してくれたこと、企業姿勢に共感できたこと。そして何よりも品質保証が決め手になったと竹下部長と福士専任部長は話します。

 

目指すは地域愛着経営

ここ数年、同社が力を入れているのがSDGsへの取り組みです。本業の不動産とSDGsを絡めた街のリフォーム。古い団地や街区のインフラを残したまま、いまの暮らしに合うように再生する試みです。

 

「北九州市は、高齢化や人口減など、日本が抱える課題の先進地といわれる都市。地元企業である私たちが自前のノウハウを使って解決するモデルケースをつくり、全国に示したい」と広報の西山係長は話します。

 

 

企業規模、拠点数がどんなに増えても、やるべきことはシンプルだと茅原取締役はいいます。「まずは、自分たちの地元で『地域愛着経営』を深め、地元から愛され、必要とされる会社になること。それが実現できたとき、新しい挑戦をまた始められると思っています。」

 

左上からJHS 北村、大英産業 西山係長、茅原取締役、岩田主任、JHS 岡部、左下から大英産業 竹下部長、福士専任部長

 

 

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JHS LIBRARY 編集部

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