2020.12.04住宅会社リポート

とにかく丁寧に。基本に忠実に/クレバリーホーム倉敷

クレバリーホーム倉敷店さんの家づくりは、世の中の効率化・省力化の流れとは真逆を行くかもしれません。「丁寧」「基本」を徹底し、検査も念入り。しかもプランニングや検査にかかる費用はすべて自社負担。どうしてそこまでできるのか、店長の塩見菊志さんに話をうかがいました。

取材・文 = 金井友子(新建ハウジング)

 

超高断熱住宅からオフグリッド住宅まで

経営元は、広島県福山市に本社を構えるアーキ・フロンティアホームさん。岡山県西部での営業エリア拡大に伴い、約10年前にクレバリーホーム倉敷店の運営を開始。一級建築士の塩見さんは高い設計力と豊富な実務経験を買われ、7年前に入社し現在店長として働いています。

 

社員は7人。年間に手がける新築は20棟ほどで、つくる家は多彩です。クレバリホームの持ち味である外壁タイル張りの家をはじめ、電気の自給自足をかなえるオフグリッド住宅『フロンティアスマート2030』、さらにそれらをベースにした自由設計を得意としています。

 

「お客様の予算と要望に合わせて性能・機能・デザインはいかようにも調整できる」とし、ZEHからUA値0・27(千田smartモデル)の超高断熱まで、断熱仕様も自由に選べるといいます。

 

丁寧に時間をかけて

塩見店長の家づくりのポリシーを聞くと「丁寧に、とにかく丁寧につくること」。お客様への対応も、住宅プランの提案も、基本的に効率は度外視。驚くほど手間ひまをかけていることがわかります。

 

塩見店長の営業スタイルは、売り込みを一切せず、モデルハウスをふらっと訪れた人とじっくり向き合い、対話とプランニングを1年以上繰り返すというもの。建築のプロとしての知識・経験に加え、水彩画やペーパークラフト、プラモデルなど多趣味なこともあり、話題が尽きることはないといいます。

 

クレバリーホーム倉敷店 塩見店長

 

「そもそもプランを描くことが好き」だと語る塩見店長。小手先の変更はせず、毎回新しいプランを1から無償でつくり、その人にとっての住みやすさを追求します。過去には1組のお客様のために3~4年かけて70以上プランニングをしたことも。検討期間がどんなに長引いても、契約を迫ったり、営業的な言葉をかけたことは一度もありません。

 

品質維持への強い想いと障壁

手間ひまを惜しまず、一つひとつの仕事に丁寧に向き合う姿勢は施工にも反映されています。「クギの打ち方ひとつとっても、基本にとことん忠実であることが重要。構造用合板も、ただ使えばいいというものでなく、基本通りにクギを打って初めて耐震性能を発揮するからです」。

塩見店長には「基本を徹底すること」への強い想いがあり、施工品質の話になると自他共に認める厳しさが顔をのぞかせます。

 

「長年建築の世界にいると、手抜きと思えるひどい現場もたくさん見てきました。けれども自分が関わる以上、いい加減な仕事は許しません。とはいえ、熱心に教育をしても、人手の問題から下請け会社や応援の職人が来たりすることもあります」。

 

そういった事情からも、すべての職人に「丁寧で完璧な仕事」と「高いモラル」を求め続けるのは難しいため、「施工品質を底上げする仕組み」を模索するようになったと
いいます。

 

独自の品質検査に挑戦

「可能なら四六時中現場に張り付いていたい」と話す塩見店長ですが、その時間は到底捻出できそうにありません。

 

そこで、独自の施工品質検査を考案。一級建築士資格をもつ検査専任のスタッフを採用し、20近い検査項目を設定して、施工状況を細かくチェックする仕組みをつくりました。そして住宅の引き渡し時に、検査内容・結果を膨大な写真とともにまとめた報告書をプレゼント。2センチもの厚みがある手づくりの報告書は、お客様からとても喜ばれたそうです。

 

一方で、社内検査の課題も見えてきました。検査員が現場監督や職人と距離が近いとどうしても「施工品質の確保」という当初の主旨が薄れ、厳しい目で検査することが難しくなってきたのです。

 

そして、「社内検査だと結果をコントロールできますよね?」というお客様の言葉が決定打となり、検査体制の見直しに着手。2018年にジャパンホームシールド(JHS)の建物品質検査を試したところ、「やっぱり第三者機関の検査だと安心できる」と好評だったことから、全棟での実施を決めました。

 

第三者検査を自社負担にした理由

JHSの建物品質検査は、基礎配筋や構造などの施工状況を第三者の検査員がチェックするもの。塩見店長は、検査回数がもっとも多い10回コースを迷わず選択し、全棟標準で実施し始めました。驚いたことに検査費用は全額自社で負担しているといいます。

 

「オプションにすると『塩見さんならちゃんとやってくれているはずだから、検査を外してほしい』というお客様が必ずいます。でもそれだと、施工品質の底上げという本来の目的が果たせないため、標準仕様にして費用をいただかないのが一番の解決策だと考えたのです」。

同社にとっては正直、お金の面でも、工事内容・段取りの面でも、検査を入れないほうが楽。ではなぜ、そこまで検査にこだわるのかといえば「自分のため」だといいます。

 

正しいことをしたいから

塩見店長は自らを「面倒くさい性格」だと評します。「こだわりが強くて、細かくて、厳しい。僕がいると現場の職人さんは大変でしょう。でも、やるからには手を抜かず、正しいことをしたい。断熱欠損があるのに見て見ぬふりをすることは到底できません」。本来なら自身の目で確認したいところを、第三者に代わってもらっている。そんな感覚だといいます。

 

第三者が検査に入るようになり、現場の意識も変わり始めました。何より、丁寧な施工と検査は最終的に「お客様のため」になるはずです。

 

最後に、弊社を選んだ理由を教えてください。

当社とお客様に両者にとって『第三者検査による安心』が得られることが一番の理由です。JHSにはお任せできる安心感と提案力がありました。

 

検査でもっとも難しいのは、タイミングと段取りですが、急なスケジュールにも柔軟に対応してもらい、現場の職人さんも協力的で、施工品質を底上げするうえで欠かせないものになっています。

 

JHSの井上さんの提案を受け、定期点検サービスも導入するこになりました。お客様にとってはアフターも第三者のほうが安心でしょうし、住宅会社にとってはアフターのための“ちょうどいい人材”探しに悩まされずに済むと期待しています。

 

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JHS LIBRARY 編集部

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