空気がきれいな健康住宅を、大工の確かな技術で届けたい/飛栄建設
家づくりを通じて住む人の健康と毎日吸い込む空気質にこだわってきた飛栄建設さん。 10年前からは、住まいの一部をクリーンルームに変える技術開発にも力を注いでいます。今回は、松田順治会長と松田卓也社長に話を聞きました。
取材・文 = 金井友子(新建ハウジング)
健康住宅に特化
飛栄建設さんの創業は1995年。国鉄勤務だった松田順治会長が35歳のときでした。以前から親戚が営む工務店を手伝い、数々の現場経験を積んできた松田会長にとって、建築業界に進むのは自然な流れ。国鉄時代の仲間からの熱烈な応援を受け、新築・修繕の依頼が途切れなかったといいます。
一方で、仲良くしてきた先輩後輩の大病や訃報に触れるたびに健康の大切さを痛感。「人は1週間食べなくても生きられるけど、空気がないと何分と我慢できない。ならば空気のきれいな健康住宅を提供して住む人に喜んでもらいたい―」。そんな思いを強くしていきました。
2002年、ある女性から相談が舞い込みます。同居予定のお孫さんが室内に入ると涙と鼻水が止まらなくなるというのです。化学物質過敏症の症状だと考えた松田会長は、解決策を探す過程で「抗酸化工法」を知り、さっそくその住まいに採用。暮らし始めたお孫さんの症状が見事に治まり、とても感謝されたといいます。これをきっかけに抗酸化工法は飛栄建設の「定番」となり、同社の「いきいき健康回復住宅」が知られるようになりました。
クリーンルームを住宅に
さらに松田会長は、2012年から新しい取り組みをスタート。
北海道大学電子科学研究所の石橋晃教授と始めた簡易型クリーンルームの共同研究をきっかけに、「住宅とクリーンルームを組み合わせた健康空間がつくれるのではないか?」と独自に着想。
試作を重ね、住宅の1室を安価かつ容易にクリーンルーム化するリフォーム工法「どこでもクリーンルーム」、災害時に屋外や体育館にクリーンルームがつくれる移動式テントタイプの「カクリア」などを次々に開発しました。
化学物質過敏症患者がこの簡易クリーンルームで過ごしたところ、睡眠の質が向上したとの報告もあり、エビデンスを集めるために大阪大学との共同研究も進めているそうです。
技術力こそ強み
松田卓也社長は、大学卒業と同時に1999年に飛栄建設に入社、年号が令和になった2019年に経営を引き継ぎました。
「健康住宅もそうですが、私としては“大工の技術力”こそ当社を語るうえで欠かせない要素だと思っています」と松田社長。社員11人のうち社員大工は5人。創業時から同社一筋のベテランのほか、昨年は20代の若手を2人採用して技術力をつなごうと奮闘しています。
「正直、リーマンショック後は大工を社員として抱えることに負担を感じた時期もありますが『自社大工をなくしたらうちはおしまい』という会長の言葉を励みに大工の内製化にこだわり、確かな施工をすることでお客様との信頼関係を築いてきた歴史があります」と話します。
近年は、注文住宅の元請に加え、同社の技術力を頼って設計事務所や不動産業者からの施工案件も増えているそう。営業の専任者を置かず、受注のほとんどは紹介という事実からも、施工力の確かさがうかがえます。
品質検査で技術力を底上げ
ジャパンホームシールド(JHS)との付き合いは3年前から。「改良工事によるお客様の費用負担と地盤への不安を少しでも減らしたい」という思いから、地盤調査、地盤品質保証、液状化調査の利用を開始しました。
液状化調査に関しては2018年の北海道胆振東部地震の影響が大きいといいます。「正直そこまでする必要があるのか悩みましたが、第三者による調査・判定があったほうがお客様の安心感につながる」と判断して採用。2021年からは「もともと採用したかった」というJHSの建物品質検査と定期点検を導入しています。
建物品質検査は、会社全体の施工品質向上が目的です。「設計事務所案件では断熱材の入れ方から気密のとり方までかなりシビアな精度を求められるのですが、言われたから頑張るのではなく、大工が自主的に技術力や施工品質を上げる意識を育てるのが一番のねらいです。私が細かく言うよりも第三者のチェックが入ったほうが実行しやすいかな、と。品質検査で指摘を受けた部分は全員で共有し改善するようにしています」。
定期点検は、累計600組ものOB施主のフォロー体制を整えるため。「当社のように営業やアフターの専任者がいない会社にとって、定期点検を確実に行える有効なサービスですよね。とはいえ、品質検査にしても定期点検にしても、一番大事なのは継続することだと考えています」。
目指すは若手の育成
松田社長に飛栄建設のこれからについて聞きました。
「お客様に喜んでいただくことはもちろんですが、20代の若手大工がどうすればやりがいを持って働けるか、技術を身につけ大工になって良かったと思ってもらえるか―これが目下の課題です。探り探りではありますが、彼らを大事に育てていくことが、ゆくゆくはお客様の満足や紹介、当社の売上につながってくれば理想的。急がば回れですよね」。
JHS LIBRARY 編集部
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